子宮頸がんと子宮体がんが混同されている

混乱の大元は、2002年(平成14年)に施行された「健康増進法」にあります。当時、子宮がん検診は、20歳以上を対象に、2年に1度の問診、視診、子宮「頸」部の細胞診、および内診が推奨されていました。

さらに、子宮がん検診(つまり体がん検診)については、「症状がある人は、まず医療機関の受診を勧める。ただし、本人が同意する場合は子宮頸部の細胞診に引き続き、子宮体部の細胞診を実施」と記載がありました。この文章の後半の「本人が同意する場合は……」が、独り歩きをして今に残っているわけです。

実際には、2008年(平成20年)度に公表された「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」で、「子宮がん検診」という名称は「子宮頸がん検診」に改められ、子宮体がん検診を推奨する文章はすべて削除されています。いまだに「子宮がん検診」に「体がん」を含めている企業検診や自治体の検診は、情報のアップデートができていないのだと思います。

健診前の問診
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リスクを考えると「過剰な医療行為」といえる

確かに子宮体がん検診で体がんが見つかる可能性もゼロではありませんから、「全く不要な検診です」と言い切ることは難しいのですが、少なくとも痛みや感染症、まれに起きる子宮穿孔(子宮に穴があくこと)などのリスクを考えると、「過剰な医療行為」に当たる子宮体がん「検診」をお勧めすることはできません。

このほか、リンチ症候群といって遺伝子に変異がある家系では、若くして子宮体がんを発症することがあります。①家系内に大腸がんや子宮体がん、卵巣がん、胃がん、腎盂・尿管・膀胱がん、十二指腸がんの患者さんが、最低3人いる、②その中の1人は、ほかの2人に対して親、子ども、または兄弟姉妹である、③最低、2世代にわたってがんを発症している、④最低1人は、50歳未満でがんを発症している、という条件がそろっている場合は、リンチ症候群の可能性があるので、集団検診ではなく、専門医に相談したほうが安心でしょう。