後輩を育てるルール

このプロジェクトで一番大事なことは、次の要件としました。

【先輩側】絶対に作業だけを依頼しない

後輩に「これをやって」と頼むのは簡単。でも、それだと今までの繰り返しになってしまいます。

だから、絶対に作業だけ頼むことはしない。頼む場合は、たとえ時間がかかっても全体像(背景、意義、やりたいこと、ゴールイメージなど)をちゃんと伝えてから、お願いすることにしました。

【先輩側】すぐに答えを言わない

仕事を依頼するとき、また会議をするときなどはできるだけ後輩に問いかけ、後輩の回答を聞いてからこちらの話をするように意識しました。そうすれば、どこが後輩の理解が足りないところなのか、勘違いしているところなのかを先輩側もきちんと把握でき、正してあげられるようになります。

【後輩側】目的や全体像を理解する前に手を動かさない

新入社員の頃は、先輩に言われたことを何も考えず反射的にやってしまう傾向があります。僕たちはそれが「新入社員の作業ロボット化」の一番の原因だと考え、「目的や全体像がわかるまで絶対に作業に取りかかるな!」と、後輩の耳にタコができそうなくらい言っていました。

ビジネスパーソン2人が書面で確認
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです
【後輩側】わからないことがあるなら、わかるまで聞く

1回聞くだけではわからなかったなんていうのは、新入社員だと当たり前のこと。でも、先輩に何回も同じことを聞きにくい雰囲気の中で、わかったふうな感じで進んでいくこともよくあります。

でも、それは先輩後輩どちらにとっても不幸なこと。

だから、先輩は何回聞かれても怒らずに何度でも答えるし、後輩は何回でも聞いていいっていうルールを作り、「むしろ100%理解できるまで、何回でも聞いてほしい」と伝えました。

2年で見違えた部下

このプロジェクト、20代の頃の僕の上司であるNさんが僕にやってくれたようにコツコツと2年間ほど続けたのですが、結果、どうなったと思いますか。

なんと彼女は、いろいろな指示を他の人から受ける際にも、

「全体像を教えてください」
「それは何のためにやるんですか」
「まずはゴールイメージを合わせましょう」

ってことを自分から言い出すようになったのです。

そしてみんなの意見を合わせるために、ホワイトボードも多用するように。

はじめは形から入ったかもしれませんが、新入社員でも目的や全体像から入る仕事の仕方を2年間続けると、それらがわからないまま仕事をすることが気持ち悪くなるんだなということを実感しました。

別の言い方をすれば、人が成長するとはこういうことなんだと実感したのです。