「家にいても使えない夫」をつくり出すもの

しかし、仮にこういった政府の策が功を奏して、男性の労働時間が減少したとして、「男性の家庭進出」は実現するのでしょうか? 女性たちからは「家にいても使えない。自分でやった方が早い」という手厳しいお言葉がたくさん……。

でも、それってなぜでしょうか。心身ともに健康な成人なら、家事でも育児でも、何でもやれるはず。男性にはできないことといえば、乳幼児期の授乳くらいのもの。

誤解を恐れず、勇気を出していいますが、男性ができないのは「家事育児」ではなく、「パートナーが既に作り上げた家事育児」だと思うのです(単に家事育児をサボっている人も、もちろんいると思いますけど)。

これは、身に覚えがあります。例えば、妻に洗濯物の「干し方」が違うと指摘されたり、衣類の「しまう場所」が違うと言われたり、娘のご飯の塩分が「濃い」と言われたり……。

私からすると、私のやり方だって、家事も育児も問題なく回るわけであって、何でそんなことをいちいち言われないといけないんだ‼ ってなります。

夫の家事に腹が立つ妻の心理

しかし、妻の視点では事情が違います。妻は、家事育児に関して自身の中で緻密にPDCAを回し、効率的な一連の流れを確立しています。そこから外れてしまうと、妻にとって、余計な負担が増えてしまうのです。それを考えなしにやる夫に、腹が立ちます(だ、そうです)。

なぜ、こんな差が夫婦で生まれてしまうのか? 原因は、育休期間にさかのぼります。私は育休を2カ月取得しましたが、妻は9カ月でした。私が育休を終えて仕事に戻って以降、妻はせっせと合理的な家事育児のシステムを作り上げていたのです。私は、妻が確立してくれたこのシステムに、ありがたく乗っかりました。何も、考えずに……。これが、よくなかった!

完成したシステムを、後からやってきた人が使いこなすのは、大変です。私は仕事でシステム開発や業務プロセスの設計をしています。自分でゼロから何かを作り出すのは、キツイですが、その作り出したものに対する理解は誰よりも深いし、快適に使いこなせます。でも、他人にとっては違うのです。

「なぜここはこんな仕様にしたの?」「あの機能はないの?」等々、いろいろな質問が山のように出てきます。特に最初は、本当に使いづらそうです(ごめんなさい)。

家事育児も、同じではないでしょうか。妻が自身にとって、家族のみんなにとって、これがベストと判断して作ってくれた家事育児のやり方。そこに考えなしに乗っかってしまった私は、その背景にある理由を理解しておらず、妻と同じようにはできなかったのです。