政府がまずやるべきは、「男性を家庭に返す」こと

ここで重要になってくるのが、政治です。こういう職場の空気に個人で対抗するというのは、本当に勇気がいることですし、ある程度の力がないと困難です(できる人は率先してガンガンやるべきです)。だからこそ、政治に後押しをしてほしいのです。

東京大学大学院経済学研究科の山口慎太郎教授は、家庭だけでなく社会の視点からも、こういった「男性を家庭に返す」施策の重要性を指摘されています。

例えば、男性育休の推進です。上記の記事にある通り、ほんの1、2カ月の育休であっても、その後の家事育児時間が有意に増えることが報告されています。

ちなみに、日本の育休制度は世界一です。ユニセフ(国際連合児童基金)が2019年に発表した報告書「家族にやさしい政策」で、名だたる先進国を抑えて堂々の1位を獲得しています。にもかかわらず、その取得率は2019年度実績でたった7.48%。まさに「猫に小判」なのです。

現在、この状況をどうにかせねばと、「男性育休の義務化」や「男性の産休」制度が検討されています。これらの議論を、加速させるべきです。

日本企業の悪習を徹底的に取り締まるべき

そして、もはや(かつての私も含めて)感覚がまひしているかもしれませんが、「サービス残業」なんて、冷静に考えると意味不明な言葉です。「いったい、誰に対するサービスやねん!」って話です。もちろん、時期によって繁閑はあります。残業だってやらねばならない時があるでしょう。だとすると、その残業代はきっちり支払ってもらわねばなりません。なのに、今の日本社会はこの残業代の不払いもひどい。これが、企業の「従業員定額働かせ放題」につながっています。おれたちゃ、スマホじゃないんだぞ‼ 政府は、こういう日本企業の悪習を徹底的に取り締まるべきです。

これをいうと「破産する中小企業が出る!」というご意見が必ず出るのですが、労働者の生活、家族を犠牲にして成り立つ事業は整理されてしかるべきだと思うのです。それが、より競争力のある産業構造の転換にもつながます。

ただ、これを自己責任論で放置してしまうと、雇用が失われるだけです。経営者も含めた、失業者の生活補償と職業教育への徹底した投資は必須です。スウェーデンなどは、そうした形で雇用の流動性を高め、国際的に高い競争力を保っています。