なぜ相手の心が動いたのか
どんな場面であれ、自分に対してOKの返事をもらえた場合、それはどこかで相手の心が動いたということです。
人生それなりの年数を生きていれば、相手が喜んでくれたり、OKの返事をくれたりという経験が大なり小なりあるでしょう。たとえ第一志望の企業でなかったにせよ、入社できたということは、採用面接官の心を動かしたということです。
また、就職や結婚、引っ越しといった、数年あるいは数十年に1度のイベントでなくとも、日常生活でのささやかなできごとなら、身に覚えがあるはずです。
人から「ありがとう」と言われたり、仕事でちょっと褒められたり、家族や友人に喜ばれたり……。「相手の心が動いた瞬間」の直前には、「あなたが相手の心を動かした、何らかの行動」があります。
例えば、こんなできごとがあったとします。
会社の定例会議が終わった後、進行役の人から「今日は助かりました。ありがとうございます」と言われた。
感謝のコメントをもらうと嬉しいですね。たしかに、あなたには「今日の会議では、積極的に参加できたという思いがあった」とします。さて、進行役の人は、何に「ありがとう」と言ったのでしょうか。
●発言が少なくなった場面で、沈黙が生まれないように、自分から発言した
●手元のPCでメモをとっていたので、会議が終わる前に、「メモを皆さんに共有しましょうか」と申し出た
「具体的に」聞いてみる
「積極的に参加していた」から?
多くの方は、このぐらいの感覚で捉えます。しかし、「積極的な参加」というのは、あいまいな言葉です。次回、もし同じように会議があったら、具体的にどんな行動をすれば、もっと喜んでもらえるのか、知っておきたいところです。
仮に、「ありがとうございます」と言ってくれた方に対して、このように聞いてみたら何が起こるでしょうか。
「そんなふうにコメントいただいて嬉しいです。ちなみに、具体的にはどの場面で『助かった』と思われたのですか?」
ここで、想定外の答えが返ってくることがあります。
「会議が終わる前に、次回の日程だけ決めておきませんかと言ってくれて、すごく助かったんですよ。参加者が多いと、次のステップが決まらなくて、ぐだっとしてしまうことがよくあるので……」
なるほど、そういうのがありがたいのか! でも、本当にそんな一言がよかったの?
疑問に思ったあなたは尋ねます。
「そんな一言にインパクトがあったのですか?」
「ええ、皆さん忙しいので、調整がすごく大変なんです。それに、あのメンバーだと、皆が思ったことを言ってくれないので、進行役としてもなかなか感触がつかめていなくて」
ここで大事なのは、「自分が予想していた場面とは違うところで、相手の心が動いていた」ということです。