フルリモート可の企業に地方から副業で飛び込む

奈良在住の佐藤さん(仮名、40代)は、本業で大阪の広告代理店で営業担当として働きながら、副業では弊社・JOINSでインサイドセールスをしている。弊社は雇用契約社員はおらず、全スタッフが副業・兼業・フルリモートで働いているため、全国から人が集まるのだ。

佐藤さんは印刷会社に新卒入社後、広告代理店へ転職。そこでマネジメントも経験し、当時の上司が独立することになり自身もそこへ入社した。

「会社を成長させるために、私自身が社会との関わりを増やす必要があると考えていました。コロナの影響で本業も落ち着いてきてしまっていたので、大変なときこそ可能性を広げるチャンスと思い、副業に挑戦することにしました」

初めての副業は、奈良の介護施設で人材の教育システムを作る業務だった。佐藤さんは本業で介護施設がクライアントだったことがあり、当時の経験を活かすことができたのだ。

しかし、プロジェクトを進めるうち、教育システムを作る以前に、勤怠管理など前段の課題が山積みであることが発覚。すぐにプロジェクト自体を見直し、課題解決に取り組むことになった。これは佐藤さんが参加したことが生んだ成果と言えるだろう。

「全国の中小企業の経営者と話せるので、自分の知見をどんどん広げられています。副業での情報収集は、本業の広告代理店の業務でもプラスになっています」と佐藤さんは言う。奈良の介護施設のプロジェクトでは、企業に深く入り込み、本業で出会えない人に出会えたことが、さらに副業を続けるモチベーションとなったようだ。佐藤さんは今、JOINSで副業人材の求人掲載をする仕事を担っている。

現在の副業稼働時間は、月間20時間で報酬は10万円ほど。平日は本業の合間に顧客との商談を週3~4回、土日に資料作りなどの事務作業を2時間ほどこなしている。本業が裁量労働制なので、商談が立て続けに入るなど平日の副業時間が増えてしまった場合は土日に本業の作業を対応することもある。

「転職や独立の経験から変化に対応することに慣れていることもありますが、時間配分を少し工夫すれば、意外と副業はできるものだということがわかりました。まずは挑戦してみて、自分に合った時間配分を模索すると良いかもしれません」

「営業」だって“手に職”、活躍できる場が多いオンライン副業

川田さんも佐藤さんも本業の経験を活かして副業に取り組んでいるが、二人とも特別な資格や希少性の高い専門職の経験があるわけではない。

「営業は専門職ではないと思われがちですが、聴く力・話す力を活かして働ける職場はたくさんあります。JOINSでも営業職の求人が増えてきているし、これも一つの“手に職”なのかなと思っています」と佐藤さんは言う。

“副業=タスク処理・スキルの切り売り”という印象が強かったという川田さんも、「実は、地方の中小企業の課題解決に一緒に取り組めるような案件もあることを知りました。これなら自分の経験を地方に還元して社会貢献できると考え、思い切って挑戦しました。本業や、家族と過ごす時間から捻出した貴重な時間を何に使うのか、自身で納得して取り組むと充実できるのでは」と話す。

副業で報酬を得ることはもちろん大切だ。しかしながら、それに加えて自身が副業で叶えたい目的を整理し、それに合った業務に取り組むことができれば、本業だけでは得られない貴重な経験となる。これからオンライン副業に取り組む人には、ぜひその経験を糧にして、次のキャリアにつなげてほしい。

猪尾 愛隆(いのお・よしたか)
JOINS代表取締役

1977年、東京都生まれ。2002年慶應義塾大学大学院修士課程修了。博報堂に入社し、法人営業を3年間経験。2005年クラウドファンディングのスタートアップに入社。事業立ち上げ・運営に12年間従事。2017年6月に退職し、大都市の副業人材と地域中小企業をつなぐ人材シェアリングサービスを提供する「JOINS」を創業。