リモートワークの増加がきっかけで、すき間時間でオンライン副業を始めるビジネスマンが増えた。ただ、女性の副業ワーカーは少ないようだ。なぜ女性はオンライン副業を始めないのだろうか、副業マッチングサービスを運営者が、オンライン副業をする女性の実態を語る。
母娘
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コロナ禍を背景にオンライン副業のニーズは増加

今、オンラインで副業する人が増えている。オンライン副業とは、副業が解禁されている企業に勤める個人が、別の企業と業務委託契約を直接結び、リモートワークで週数時間程度業務をする働き方だ。新型コロナの影響で、都市部の大企業勤めの人々の間ではリモートワークが日常となりつつある。その結果、今まで通勤や会食に使っていた時間が空き、月に30~40時間以上が捻出できるようになった。この空いた時間を有効活用できるということで、オンライン副業の人気が高まっているのだ。

筆者が2017年6月から運営している地方中小企業と主に都市部の個人をつなぐオンライン副業マッチングサービス「JOINS」への登録者は、昨年の約4倍に急増している。しかしながら、JOINSに登録する副業人材のうち「女性」は18.8%と実はまだまだ少ない。それはなぜか。

思うに、真面目な人ほど、「特別な資格や専門性の高い職種経験がないと難しいのでは」と副業を敬遠してしまうようだ。しかし、決してそうとは限らない。実際にオンライン副業をしている二人の女性の事例から、副業女性のリアルな姿をぜひ感じていただきたい。

昼間はITベンチャー役員、朝晩は北海道で副業

「デジタル化がもっと進んでいたら新型コロナウイルスの感染が拡大したときも、すぐに満員電車は解消できただろうし、生活が苦しくなってしまった人をもっとピンポイントで救えたのではないでしょうか。自身の培ってきたデジタルの知識で、社会に貢献したいという想いが強くなりました」

女性
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都内のITベンチャー企業で役員を務める川田さん(仮名、30代)はこう話す。

彼女は新卒から10年以上同じ会社で勤めた。営業からカスタマーサポートまで様々な部署を経験したのち、新規事業を立ち上げ、分社化したのが今の会社だ。会社の外での業務経験がなく、「自分が他の会社や社会で通用するのかを試してみたい」という気持ちを抱えていたが、忙しくて挑戦するタイミングをつかめずにいた。

そんな想いを抱える中でコロナ禍となった。在宅勤務を余儀なくされて日本中が大騒ぎをしているさなか、自分の会社ではデジタル化を進めていたことでそれほど問題が起きなかった。想像以上に世間ではデジタル化が進んでいないということを再認識し、自分の持っている知識やスキルも誰かの役に立つのではないかと川田さんは考え始めた。そこでJOINSに登録し、2021年1月から北海道の卸売り企業で副業を始めることにした。

副業の内容は、販売促進ツールの制作と新規事業立ち上げの推進だ。

その卸売り会社での販売促進ツールの制作の現場は、非常にアナログだった。営業パンフレットやカタログなどに載せる情報は、複数の支社に在籍する営業部の担当者がメールを通じてファイルを収集し、制作担当者が一つひとつ開け、最終的には一つのファイルに集約する。さらに、それを基に作成した原稿もまたメールで送り合って確認するという作業が発生していた。

「その作業が大変すぎて内容を良くすることまで手が回っていない」と川田さんはすぐに気づいた。さっそく、同時編集が可能で、リアルタイムで保存されるクラウドツールの導入を進めて効率化した。新規事業の推進は、まだ始めて1カ月だが、副業先の企業が本業と同じ商材を扱っていることもあり、自身の経験を基にした企画提案ができているそうだ。

副業の報酬は10万円、細切れの時間を上手に活用

平日は副業の打ち合わせを週1~2回オンラインでこなし、打ち合わせ以外の作業は休日も含め週に5~6時間取り組んでいる。現在は、副業稼働時間は週8時間~10時間で月間上限40時間となっている。

川田さんは、夫と小学校低学年の長女と3人暮らし。本業の仕事や育児、家事をこなしながら副業の時間をどう確保しているのか紹介したい。

川田さんの娘には発達障がいがあり、感情のコントロールが難しいときがある。放課後、学童保育に行けずに、直接家に帰ってくる日も。定期的に医療機関も受診する。「副業を始めるときに、娘との時間は削らないと決めていました」。川田さんはこう話す。

本業の仕事をテレワークで終えるのは17時ごろ。18時すぎには同じく在宅勤務中の夫と、娘と食卓を囲み、家族との時間を優先する。子どもの話をじっくり聞くのもこの時間。副業の仕事に取りかかるのは21時、娘が眠りについてからだ。週末は娘の習い事に付き添い、カフェで待つ間に副業の仕事を進める。日々、細切れの時間を見付け出して、業務を進めているという。

時間術と同じぐらい川田さんが工夫しているのが、仕事の効率化だ。本業と違い、副業に取り組む時間は細切れのため、どこまで作業したのか、どの案件まで対応済みかわからなくなってしまうこともある。

そこで、作業用ドライブを作り、完了した業務は都度「対応済みフォルダ」に入れ、一目で進ちょくがわかるようにした。また、メールのやり取りだと添付ファイルを見逃してしまう恐れもあるため、副業先とGoogle Workspaceで素材を共有し、漏れがないよう対策を打った。

気になるのが夫との家事・育児分担だ。「娘が生まれた当時は、夫はゴミ出しぐらいしかしませんでした。でも、根気強く教えて、今は料理から掃除までひと通りこなします」(川田さん)。食事も半調理済みのミールキットや、デリバリーを取り入れ、互いにストレスがたまらないようにしている。

副業で得る報酬は月額10万円ほど。ただ、金額は今後調整する予定だという。

「報酬を先に決めてしまうと、副業先も『元を取らないといけない』と構えてしまうかなと思い、この金額にしました。私自身も副業は初めてなので、まずは本業に支障のない程度に取り組みたいと考えています」

フルリモート可の企業に地方から副業で飛び込む

奈良在住の佐藤さん(仮名、40代)は、本業で大阪の広告代理店で営業担当として働きながら、副業では弊社・JOINSでインサイドセールスをしている。弊社は雇用契約社員はおらず、全スタッフが副業・兼業・フルリモートで働いているため、全国から人が集まるのだ。

佐藤さんは印刷会社に新卒入社後、広告代理店へ転職。そこでマネジメントも経験し、当時の上司が独立することになり自身もそこへ入社した。

「会社を成長させるために、私自身が社会との関わりを増やす必要があると考えていました。コロナの影響で本業も落ち着いてきてしまっていたので、大変なときこそ可能性を広げるチャンスと思い、副業に挑戦することにしました」

初めての副業は、奈良の介護施設で人材の教育システムを作る業務だった。佐藤さんは本業で介護施設がクライアントだったことがあり、当時の経験を活かすことができたのだ。

しかし、プロジェクトを進めるうち、教育システムを作る以前に、勤怠管理など前段の課題が山積みであることが発覚。すぐにプロジェクト自体を見直し、課題解決に取り組むことになった。これは佐藤さんが参加したことが生んだ成果と言えるだろう。

「全国の中小企業の経営者と話せるので、自分の知見をどんどん広げられています。副業での情報収集は、本業の広告代理店の業務でもプラスになっています」と佐藤さんは言う。奈良の介護施設のプロジェクトでは、企業に深く入り込み、本業で出会えない人に出会えたことが、さらに副業を続けるモチベーションとなったようだ。佐藤さんは今、JOINSで副業人材の求人掲載をする仕事を担っている。

現在の副業稼働時間は、月間20時間で報酬は10万円ほど。平日は本業の合間に顧客との商談を週3~4回、土日に資料作りなどの事務作業を2時間ほどこなしている。本業が裁量労働制なので、商談が立て続けに入るなど平日の副業時間が増えてしまった場合は土日に本業の作業を対応することもある。

「転職や独立の経験から変化に対応することに慣れていることもありますが、時間配分を少し工夫すれば、意外と副業はできるものだということがわかりました。まずは挑戦してみて、自分に合った時間配分を模索すると良いかもしれません」

「営業」だって“手に職”、活躍できる場が多いオンライン副業

川田さんも佐藤さんも本業の経験を活かして副業に取り組んでいるが、二人とも特別な資格や希少性の高い専門職の経験があるわけではない。

「営業は専門職ではないと思われがちですが、聴く力・話す力を活かして働ける職場はたくさんあります。JOINSでも営業職の求人が増えてきているし、これも一つの“手に職”なのかなと思っています」と佐藤さんは言う。

“副業=タスク処理・スキルの切り売り”という印象が強かったという川田さんも、「実は、地方の中小企業の課題解決に一緒に取り組めるような案件もあることを知りました。これなら自分の経験を地方に還元して社会貢献できると考え、思い切って挑戦しました。本業や、家族と過ごす時間から捻出した貴重な時間を何に使うのか、自身で納得して取り組むと充実できるのでは」と話す。

副業で報酬を得ることはもちろん大切だ。しかしながら、それに加えて自身が副業で叶えたい目的を整理し、それに合った業務に取り組むことができれば、本業だけでは得られない貴重な経験となる。これからオンライン副業に取り組む人には、ぜひその経験を糧にして、次のキャリアにつなげてほしい。