何を差別と感じるのか、すり合わせが必要

【田中】僕は、人によって差別を感じる基準が違うなって感じています。例えば「華がある」っていう言葉、僕も悪気なく言っちゃうと思う。逆の立場だったら、「やっぱり男子がいると頼もしいね」って言われても僕は全然気にならないです。男性のほうは悪気がないのに「それはフェミニズム的にアウト」って言われると……。何を差別と感じるのか、そこをすり合わせるような教育が必要なのかもしれません。

【原田】「頼もしいね」と言われて、男性だから責任を押し付けられたように感じて嫌だと感じる男性もいるかもしれません。君は違うけれど、今時はそう感じる若年男性は増えている気もします。でも、だとしたらジェンダー論として取り上げるべき事例ではない、という話になってしまうのかもしれませんね。男性の中でも女性の中でも、人によって感じ方が違う点がとても難しい問題で、確かに時間をかけてのすり合わせの作業が必要なのかもしれないですね。

【田中】報道ステーションのCMの炎上も、似たところがあるなと思っています。個人的な価値観と、「差別や不平等はいけない」っていう基本的な基準を、ごっちゃにしている人がいるんじゃないかと。それが過剰なフェミニズムにつながっているような気がします。もちろん男女不平等は事実としてあって、学生でも例えばサークルの幹部のほとんどが男子とか、よくありますよね。

【原田】基準がまだ明確でないから、個人的な感情や、やや過剰に感じる批判もあるということなんでしょうかね。時代の過渡期だから難しい面もあるのだろうけど、確かに前回議論したように、基準や線引きが明確でないので、「怖くてジェンダー論に触れられない」という若年層が現状では多くなってしまっており、未来のジェンダー論の観点から言ってあまり宜しくない状況にある、ということなのかもしれませんね。 しかし、Z世代の間でも未だに大学のサークルの幹部のほとんどが男性って状況なのは少しビックリですね。

同じ大学でも、キャンパスによって温度差

【安田】私がいる環境では逆で、女性リーダーのほうが多いです。慶應SFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)のサークル代表だけ見ても、男女同数ぐらいですね。私が男女不平等を感じていないのも、それが理由かもしれないです。それに、自分の今の環境だと女性でよかったと思うことのほうが多い。例えば原田さんのさまざまな企業に対するマーケティング業務でも、女性限定のワークショップが結構ありますよね。企業のために生理用品やヘアケア製品のリサーチをしたいからって。男子には声がかからないわけだから、自分はすごく有利だなって。

【原田】確かに世の中には化粧品や生理用品など、メイン顧客を女性とする商材がとても多いのです。マーケティングを行っている僕自身も僕の研究所にいる学生さんには男女ともに平等に経験を積むチャンスがあれば良いと思っているのだけど、どうしても女性限定のワークショップになってしまうケースが実際に多いですね。でも、一般的に就活においては男性のほうが有利だと言われていたりするし、医学部で男性を優遇して合格させていた問題もあるし、学生時代でも問題は存在していると思いますけどね。

【山田】同じ慶應でも、三田キャンパスや日吉キャンパスの国際交流系サークルでは、男子が上に立っていることが多いですよ。私もSFCですが、ここは割と特殊で、男性女性じゃなくて「一人の人間として実力があるかないか」っていう考え方の人が多い。加えて、私は中学の時は男女比が1:2で女子のほうが強かったし、高校は女子高だったから……。差別や不平等は社会に出たら感じるかもしれませんが、今は全然です。

【原田】僕は三田出身ですが、三田はちょっとクラシカルで保守的なんでしょうかね。ジェンダー論に関心のある末石さんは、この問題について周りの子と話す時ギャップを感じることはある?