オープンに、冷静に話せる環境が必要

【末石】ジェンダー問題に関しては、私も発言する場は選びますね。講演会で会った子とか、関心が似ている相手とだけ話す感じです。そうでない子はやっぱりちょっと冷ややかだったり、過激じゃないのに過激って言われたりするから。もちろん、女性蔑視発言をされたら「それ違うんじゃない」って遠慮なく言いますが、自分から進んで議論を持ちかけたりはしないです。SNSでも、コミュニティーや話題によってアカウントを使い分けています。

【原田】ジェンダー論に限らず、日本の若者の間では社会テーマについて熱く語る人を「意識高い系」と揶揄やゆする傾向がありますね。言うとたたかれ、だから言わない。聞くほうもただ怖がって距離を置く。こういう風潮はSNS依存度の高い日本の若者特有の本当に良くない点かもしれませんね。

【鈴木】私はジェンダー問題についてはあまり知識がないんですが、そういう人でも、もっと身近でわかりやすい話題だったらオープンに話しやすいのかも。以前、海外の女性が「一人で夜道を歩く時は鍵を指に挟んで、襲われたらそれで刺せるようにしている」ってツイートしていたんです。その不安な気持ち、私もすごくわかるし友達も共感してくれたんですが、男の人はどう思うのかなって気になって。女性は日頃からちっちゃな不安を感じながら行動しているんだよってこと、知っているのかな。そんな身近な話題から入れたら、ジェンダー問題も話しやすいのかもと思いました。

【原田】確かに、小さなテーマからでもオープンに話し合える環境は大事だね。末石さんのように現状を問題だと感じる人がいる限り、改善は続けていかなきゃいけない。男女平等の実現に足りない部分を冷静に見つめて、冷静に改善に取り組んでいくべきだろうね。

構成=辻村 洋子

原田 曜平(はらだ・ようへい)
マーケティングアナリスト、芝浦工業大学教授

1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。