期間終了後、自らの意思で会社に残る人がほとんど

私のところに相談に来る方は、「今どうすればいいか」ということで頭がいっぱいで、「あとどれだけ頑張れるか」とは考えたことがない方が多いです。

でも、改めて「いつまでなら頑張れるか」を考えてみることがとても大事です。ゴールが見えると、人は前へ進みやすくなるからです。

また、実際にこのような期間限定思考を実践した方は、いざ限定期間が終了して、たとえ現状が変わっていないとしても、会社を辞めないことが多いです。

もちろん、転職活動がうまくいかずに、会社に残る方もいるでしょうが、私が知る限りは、自らの意思で会社に残っている方がほとんどです。

期間限定思考を実践したことで心に余裕が生まれて、ストレスの対象と、距離をほどよくとれるようになるからかもしれません。

心がズタボロになりそうなら、すぐにでも逃げていただきたいですが、今すぐには動けない場合、この期間限定思考がきっと役に立ちます。

クレーマーには真正面から向き合わなくていい

とはいえ、期間限定思考をするのが難しい職種の方もいらっしゃると思います。

例えば、接客業の方は、いつどんなお客さんがやってくるかわかりません。残念ながら、良いお客さんばかりではないですからね。ときにはクレーマーのような人もいると思います。

しかも、苦手な人が社内の人間の場合は、警戒してスルーをしたり、ある程度心のガードを固めておくこともできますが、初対面のお客さんから思いがけず発せられる攻撃的な言葉は、もろにくらってしまいます。だから、破壊力が抜群です。

それが一回や二回ならまだしも、何回も同じクレーマーがやってくる場合は、本当に困ってしまいますよね。

相手がいつ来店するかわからないので、期間限定思考でゴールを見出して、踏ん張ることもできません。

そういう場合は、会社側がスタッフを守るために、やらなければいけないことがあるので、「自分がしっかり対応しなくては」と、頑張らなくてもいいのです。

いくらお客さんだからといって、クレーマーに真正面から向き合っていると、こちらの心が削られてしまいます。

ですから、まずは会社に相談して、自分の逃げ道を確保しておくこと。

その人が来る時間帯がある程度わかっているなら、時間をずらしたり、バックヤードのほうに移動したりして、物理的距離をとりましょう。

そして、会社を巻き込まなくても、今すぐできることは、そのお客さんの悪口を言うこと!

クレーマーをはじめとする嫌なお客さんに関しては、ぜひ職場のみんなで愚痴を言い合ってください。そうやって発散するのはとても大事です。

嫌な気持ちは、自分一人で抱え込まないようにしてくださいね。

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。