「面白くない!」は危険な言葉

つまり、その人にハマるものを見つけて、芸として取り入れれば、売れる可能性は誰にでもあるのだ。

逆に、「この人は売れそうだ」「この人は売れないだろう」と決めつけてしまうのは本当によくない。スクールの講師が生徒に向かって言う「面白くない」という言葉なども、とっても危険だと思う。

そのようなことを言ってしまう人に対して、「お前ごときのセンスで、そんな人生変えるようなひとこと言って大丈夫か?」と、疑ってしまうのだ。

もちろん、好きか嫌いかを言うのは自由だが、「面白いかどうか」に関する発言は「ちゃんと責任持てんのか?」って。言葉は選ぶべきだとつくづく思う。

「テレビは利用するもんだから」先代社長の言葉

現在、スクールJCAは2クラス。全員で100人ぐらいの生徒が、お笑いの道を目指している。

児嶋一哉『俺の本だよ!!』(世界文化社)
児嶋一哉『俺の本だよ!!』(世界文化社)

それに比べて僕らの時代は7人。当時は、人力舎主催で『バカ爆走!』というお笑いライブを新宿でやっていたのだが、僕らはそれに月6日間も出演しなければならなかった。

今の子たちは、ここに出るのも大変なぐらい競争相手がいる。僕らは無条件で、ネタを6日間舞台にかけ、磨き上げられるという、とても恵まれた環境だった。

当時は僕ら以外にも、東京03の飯塚(悟志)が組んでいた「アルファルファ」、「アンタッチャブル」、「おぎやはぎ」、「ドランクドラゴン」がいて、変な圧もなく、ライブの主催者も「それでやってみたら?」というようなしがらみのないスタンスでやらせてもらえていた気がする。

また、このライブでキャラを確立する人も多かったように思う。

事務所や養成所の、のびのびとした雰囲気を作り上げてきた先代の社長は

「テレビなんか出なくていい」

という人だった。ライブや営業をやっていけばいい、という考えを持っていて、

「テレビなんて使われるもんじゃない。利用するもんだから」

ってスタンスだった。テレビで目立ちすぎるとすぐ消費されてしまうけど、特に出すぎず、長いことやっていければいいんだ、という信念だった。

当時は「この社長は何を言ってんだ」と思い、まったく共感できなかったけれど、年を重ねると、年々その言葉の意味がわかってきているし、現に、人力舎にはそういった息の長い芸風のタレントが多いと思う。