二択で選ぶと記憶呼び出される

この生徒は、最初の私の質問に対して、友人に会った時の感情を覚えていないと言いました。つまり、本人としては、忘れてしまったか、そもそも感情が発生していなかったような感覚でいたわけです。

しかし、ポジティブかネガティブの2択で選んでと言われたら、友人と会った時の感情の記憶が少しだけ呼び出されました。でも、どちらも正確に自分の感情を表す感じがしなかったのです。だから、私に選べないと返答したわけです。

対立概念
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ですが、とにかくどちらかを選んでと私に言われたので、強引に「ポジティブ」を選んで、それを口にしました。その瞬間、自分が当時抱いた感情とのギャップを感じて、強烈な違和感を覚えたのでしょう。その後、自覚のないままスルスルと、その時の正確な感情を語りだしました。そして、私が最初に知りたかったことを、しっかりと伝えきってくれたのです。

自分の感情を正確に語るためのテクニック

このように、人間の脳に対しては「最初に感情を大雑把に口にする」ことで、当時の感情の記憶がするすると出てくるようになっているのです。これを私は「感情キーワード」と呼んでいます。これは、あなたの脳に対する「隠れ操作コマンド」であると言ってもいいテクニックです。

この「感情キーワード」を口にすると、脳に保存されていた感情が、自然と正確に出てきます。だから、「私はそんなに感情を伝えるのが得意じゃないから……」という人でも、自分の感情を正確に語ることができるのです。