五月病で会社を辞める新卒はいない

⑦チームごとの目標を与える

わが社で、五月病にかかって会社を辞める新卒社員はいません。「お世話係がフォローする」「内定時代から少しずつストレス耐性を高めている」といった理由のほかに、「チームごとに目標を与える」ことも、五月病の防止につながっています。同じ境遇の仲間同士で目標を共有することで、ストレスが軽減するからです。

入社後、ダスキン事業部に配属された新卒社員は、4月中旬から約1カ月間、「ダスキン販促キャンペーン」に参加します。

このキャンペーンは、支店対抗の「チーム戦」です。キャンペーン期間中、もっとも多く売り上げた支店には、部門賞として金一封が渡され、表彰も行います。

キャンペーンで表彰されるには、ベテランも新人も一緒になって「チーム」で結果を挙げなければなりません。人間は、みんなで同じ目標に向かっているときに、自分だけ離脱しようとは思わないものです。

キャンペーンで表彰されれば、達成感を覚えて、うれしい。うれしいから次も頑張る。キャンペーンの結果が悪ければ、悔しい。悔しいから次こそは頑張る。

うれしさも、悔しさも、支店のみんなで味わう。だから一体感が生まれます。人間はひとりだと挫折するが、チームだと、支え合うことができます。

このキャンペーンの期間中に辞めた新卒社員は、過去にひとりもいません。

全社員280人中、管理職180人

⑧新卒社員にアンケートを実施する

定期的に、内定者、または新卒社員(新卒社員を迎えてから2、3カ月後)にアンケートやヒヤリングを実施しています。

「彼らが何を感じ、何を考えているのか」「何を求めているのか」を把握し、彼らの声を組織の改善に役立てています。回答は無記名で、新卒社員も本音が書けます。

⑨管理職の数を増やす

わが社は、管理職(課長職以上)が180人を超えています。全社員は280人です。管理職を多くすれば、ひとりの管理職が持つ部下の数が少なくなるため、その分、新卒社員にも目が届きやすくなります。

社員教育に手間がかけられると、離職率を下げることが可能です。

ひとりの課長が持つ部下は、「5人」が基本です。部下のいない専門職の部長・課長もいます。

小山 昇(こやま・のぼる)
武蔵野 社長

1948年山梨県生まれ。東京経済大学を卒業し、日本サービスマーチャンダイザー株式会社(現在の株式会社武蔵野)に入社。一時期、独立して自身の会社を経営していたが、1987年に株式会社武蔵野に復帰。1989年より社長に就任して現在に至る。2001年から中小企業の経営者を対象とした経営コンサルティングを展開。全国各地で年間240回の講演・セミナーを開いている。主な著書に『人材戦略がすべてを解決する』『新版 経営計画は1冊の手帳にまとめなさい』『99%の社長が知らない 会社の数字の使い方』(以上、KADOKAWA)、『4万人の社長・幹部がベンチマークした すごい会社の裏側(バックヤード)!』(あさ出版)、『儲かる会社のコミュニケーションの鉄則』(朝日新聞出版)などがある。