※本稿は、小山 昇『社長、採用と即戦力の育成はこうしなさい!』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
武蔵野は、「上司が嫌」になるケースが多い
中には、「辞めよう」と思いながら、踏みとどまった社員が大勢います。会社を辞めるおもな理由は、「仕事が嫌で辞める」「上司が嫌で辞める」「会社が嫌で辞める」の3つです。
取締役の佐藤義昭は、「わが社は、『上司が嫌』になるケースが多い」と述べています。
「『辞めたい』という意思表示をしてきた社員と話をするとき、私は最初に、『小山さんのことを嫌いになった?』と聞きます。すると社員は100%。『いや、そんなことはないです』と答えます。次に、『じゃあ、会社が嫌いになった?』と尋ねます。会社が嫌いになるのは『会社のルールを知らされてない』からです。武蔵野はルールが明確で方針共有も徹底しているから、『会社が嫌』になる社員もそれほど多くはありません。
もっとも多いのは、『上司が嫌』、あるいは『社内の人間関係が嫌』になるケースです。人間関係に原因がある場合は、人事異動をする、上司を替える、上司の意識を変えるなどして、離職を防ぎます」(佐藤義昭)
部下の本音を知って涙する上司
佐藤はさらに続けます。
「村岡邦雄課長が、かつて私(当時部長)の下で店長をしていたときのことです。村岡の部下数名から『今日、飲み会をやるので、佐藤さんも来てください』と誘われ、顔を出すことにしました。私は当然、店長の村岡も参加していると思っていました。ところが、村岡は呼ばれていなかったのです。
『店長の村岡がいないのはおかしいな』といぶかしく思っていると、支店のメンバーのひとりがこんなことを言ってきました。『佐藤さん、乾杯の前にお話を聞いていただけませんか? 私たちは、村岡さんが嫌いです』。この飲み会は、村岡に対する不満を私に伝えるために催されたものだった。
私はそのときはじめて、『村岡が部下からどのように思われていたのか』『村岡がなぜ嫌われているのか』を知りました。
後日、村岡を東小金井駅前のデニーズに呼び出して、そのことを伝えました。村岡は、『嫌われている』とはまったく思っていなかったようです。部下の本音を知った村岡は、涙を流して反省しました。
その後村岡は、『部下と現場同向をする』『ランチを一緒に食べる』『サシ飲みをする』『一緒に環境整備をする』など、時間と場所を部下と共有しはじめた。その結果、部下の気持ちにも寄り添えるようになって、大量離職を防ぐことができた」(佐藤義昭)