居場所を失いたくないおじさんたち

【白河】中田さんの会社では、ミドルに投資する価値があると判断しているわけですね。

【中田】やはり働き方改革を進めるには、ミドルのマインドを変えることが不可欠なんです。残業削減にしても女性活用にしても、働き方改革にひもづく課題を解決するには、職場で影響力を持つ管理職やベテランたちの意識を変えることはどうしても必要になる。だからそのためにもミドル向けの研修に力を入れて行こうという流れになっています。

ただ組織全体の年齢層が高いので、最近は年上の部下を持つ課長職が増えているのですが、部下のおじさんからすごく反発されるんですよ。何かを指示しても、「俺はこのやり方でやってきたんだから変えたくない」って。そう主張することで、自分の居場所を確保したいんでしょうね。

【白河】居場所ですか。まさに会社=居場所。他に拠点がないわけですね。リモートワークやフリーアドレスに抵抗がある理由も、「居場所」問題ですね。

不満をあらわにするシニア男性
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【中田】最近も営業部門が新しいシステムを入れたのですが、やっぱりおじさんたちは使おうとしない。そのシステムを使えば仕事を大幅に効率化できるのに、古いやり方にしがみつくんです。会社がせっかく良い仕組みを用意してくれたのに、過去の成功体験が捨てられないんでしょうね。

パワハラ加害者は40代50代が圧倒的

【伊藤】おじさんって、時代の変化に合わせて自分のやり方を変えるのが苦手ですよね。私はパワハラの通報窓口も担当しているのですが、加害者は40代と50代が圧倒的多数です。もしかしたらパワハラは生え抜きの社員に多くて、外から転職してきた人には少ないんじゃないかという仮説も立てていたのですが、実際は中途入社組も加害者になる。だからこの世代はどんなキャリアを辿った人でもパワハラ的なコミュニケーションが当たり前という感覚が身についていて、それを今も変わらず続けているんじゃないかと。

【根本】自分が上司にパワハラ的な扱いをされてきたから、それを繰り返すってことですか。

【中田】高度成長期のコミュニケーションは上意下達の指示命令がほとんどで、上司も「いいからやれ」と有無を言わさず部下に何でもやらせていたんでしょうね。それが今の時代はパワハラになる。だからうちの会社では、今まさに「時代の変化とともにコミュニケーションのあり方も変わっていますよ」とおじさんたちに教える研修をやっています。現在は周囲の人の話に耳を傾けて、チームの皆でどうするかを話し合っていかないと、イノベーションは生まれないし複雑化したお客様の問題も解決できませんよと。そうしたら40代の管理職が、「自分は入社して20年になるが、今まで上司からは指示が飛んでくるだけで、一度も話を聞いてもらったことがない」と言うのでびっくりしました。