スカウトを待っていてはいけない

転職エージェントは、野球界で言えば球団に選手を紹介する代理人のようなものです。優秀な選手をできるだけ高年俸で紹介したほうが利益が上がるので、そうでない選手にわざわざ時間を割くことはしません。そのため、自分が「そうでない選手」に入ると思う人は、スカウトは来ないと考えて自ら動く必要があります。

その意味で、スカウトメールは新築マンションのチラシと同じだと考えておくといいでしょう。この類のチラシがポストに入っていたからと言って、「マンションを買える高収入の人間だと思われている」と喜ぶ人はいません。チラシは選んだ人にだけではなく、誰にでも配られているからです。本当にマンションを買いたい人は、チラシを待つことなく自ら情報を集めにいくはずです。

スカウトメールに惑わされないためにも、転職の際にはやはり大手から中小まで、複数の人材会社を使ってほしいですね。何社か使い分けているうちに、それぞれの使い勝手や効率のよい応募方法が見えてくると思います。

40歳以上なら、月に数十社の応募を

特に、40歳以上の人が求人サイトで転職先を探す場合は「効率のよい応募」が大事。転職先の精査も大事ではありますが、1カ月で3社応募する程度ではまったく足りないのが実情です。よほど行きたくない会社でもない限り、ある程度は割り切って、少なくとも月に数十社応募し続ける人のほうが成功確率は断然上がります。とにかく書類通過率が低いので、できるだけ多くの企業に応募しておき、返信が来てから精査するという姿勢でもいいと思います。

そして求人サイトで応募する時は、まず「この求人の裏にどのぐらいの数のライバルがいそうか」を考えてみてください。有名な大企業に行きたいと思っていても、そうした企業には応募が集中します。その中を勝ち抜いていけるのかどうか自己を見つめ直し、難しそうだと思ったら中小企業にもぜひ目を向けてください。

転職成功の大事なポイントは、自分がやりたい仕事かどうか、幸せに働けるかどうかです。そこに「大企業であること」が必須なのかどうか、今一度考えてみましょう。

ヘッドハントはエグゼクティブが対象であり、スカウトメールは不特定多数の転職希望者に送られるもの。その多くがDMで、本気スカウトはごく一部です。スカウトメールは情報収集の一環に過ぎないと割り切って、惑わされることなく自分に合う企業、自分を求めている企業を探してほしいと思います。

構成=辻村 洋子

黒田 真行(くろだ・まさゆき)
転職コンサルタント、ルーセントドアーズ代表取締役

1988年、リクルート入社。2006~13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。2014年ルーセントドアーズを設立、成長企業のための「社長の右腕」次世代リーダー採用支援サービスを開始。35歳からの転職支援サービス「Career Release 40」、ミドル・シニア世代のためのキャリア相談特化型サービス「CanWill」を運営している。著書に『転職に向いている人 転職してはいけない人』『35歳からの後悔しない転職ノート』『採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ』など。