Q.格差を拡大する資本主義に終わりはありますか?

A.ポスト資本主義の明確なイメージは存在しません

近年、資本主義がもたらす問題点を批判し、資本主義に代わる経済システムについての議論が目立ちます。しかし、ポスト資本主義の明確なイメージはまだ描かれていません

自由な経済活動を根本とする資本主義は、放っておけば当然格差が広がっていきます。しかし格差があまりに広がって貧困層が拡大すると、国家や社会が不安定になり、資本主義自体が機能不全に陥ります

ではなぜ、これまで資本主義は続いてきたのでしょうか。1つにはグローバリゼーション以前は、先進国に利潤が集中していたため、先進国のなかでは格差が比較的小さかったことがあります。加えて戦後は社会保障も手厚く、税を通じた再分配もうまく機能していました。その結果、先進国には分厚い中間層が形成され、資本主義も安定していたのです。

しかし21世紀に入り、グローバリゼーションが進展すると、先進国のグローバル企業は安い労働力を求めて盛んに海外に進出し、それが発展途上国といわれた国々の経済発展を後押ししていきます。結果、発展途上国のなかに富裕層や中間層が形成されましたが、同時に先進国では中間層が解体され、格差が大きく開くことになりました。それが現在見られる、資本主義批判の背景です。

とはいえポスト資本主義の姿が見えない以上、人々の不満が爆発しない程度の格差に着地点を見いだすしかないでしょう。

▼マルクス主義とは
マルクスとその盟友エンゲルスの思想をもとに、労働者の解放や平等な社会をめざす理論を「マルクス主義」といいます。とはいえ、マルクス自身もマルクス主義も、資本主義に代わる社会主義や共産主義がどういう社会システムによって運営されるのか、具体的に描くことはありませんでした。またマルクスは、同時代に提起されていたさまざまな未来社会論をつぶしてしまった。これは思想的には大きな損失でした。