大変革時代に学ぶ現代哲学
歴史上繰り返しやってくる「変革期」。ウィズコロナの時代だからこそ、問題の根本を知ることが大切。
Q.21世紀の哲学って、これまでと何が違うのですか?
A.相対主義を克服する哲学スタイルが展開しています
20世紀の哲学は、総じて言葉や言語に着目する理論が大きな位置を占めていました。人間は言語を通して世界を理解する。そこから、言葉が違えば、物の見方や理解の仕方が変わるという「言語相対主義」が非常に強く主張されるようになりました。
しかし21世紀に入って、言語によるアプローチでは事物の本当のあり方に迫れないのではないかという議論が目立つようになります。言語はサングラスのようなもので、サングラスごとに色合いが変わって見えます。それでは事物の本当のあり方を理解できない。そこで21世紀の哲学は、言語ではなく、直接的に事物のあり方を明らかにするアプローチを模索しているのです。
そのなかで現在、「自然主義」と呼ばれる哲学が大きな潮流を形づくっています。自然主義とはわかりやすくいえば、進化生物学や脳科学など、自然科学的なアプローチによって、哲学的な問題を解明していくことをいいます。
たとえば、私たちの道徳的な判断は、脳のどのような構造や働きによって引き起こされるのかを実証的に論証する。あるいは心や意識のあり方を、生物の進化から説明するのが、自然主義的な哲学のスタイルです。
一方で、日本で人気を博しているドイツの哲学者マルクス・ガブリエルのように、自然主義を批判する哲学者も少なからずいます。
自然主義の哲学者たちは、脳の全容がわかれば、心や意識の謎も解明できると考えます。でも本当にそうでしょうか。実際、いまなお心と脳がどのように関係しているのか、決定的なことは何もわかっていない状況です。反自然主義に立つ哲学者は、自然科学では心や意識、道徳などの哲学的問題は解くことができないと考えます。
このように、20世紀は言語が哲学の主戦場でしたが、21世紀の哲学は自然主義対反自然主義という対立が、大きな舞台になっているのです。