20世紀に世界を席巻した相対主義の哲学は「何でもあり」の無秩序をもたらした……。21世紀、そして大転換期ともいえるポストコロナの時代に、私たちは新たな哲学的思考を模索しなければならない。

時代の大転換期に哲学は求められる

近年、ビジネスパーソンからも哲学が注目を集めていることを実感しています。では、なぜいま哲学が注目されるのか。

古典的な列の背景にギリシャの哲学者ソクラテスの大理石像
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Panasevich)

その大きな理由の1つは、時代が大きく変わり始めていることを多くの人が感じ取っているからでしょう。実際、現代という時代は、非常に大きな転換期を迎えています。それは、15世紀に活版印刷が誕生した時期に匹敵するような大転換期であり、IT(情報通信技術)革命やBT(生命工学)革命は、これまでの人間観や社会観を根本的に変えていくように見えます。

歴史を眺めてみると、時代が大きく転換するとき、哲学は非常に活発に展開されていることがわかります。中世から近代への移行期には、科学革命や宗教改革が起こり、近代国家が組織されていきました。その激変期に対応するように、哲学でもルネ・デカルトやジョン・ロックらをはじめとした哲学史上のビッグネームたちが、それまでとはまったく異なる哲学を打ち立てました。

またこの移行期では、社会のシステムも人々の価値観も劇的に変わっていきました。20世紀末から21世紀の現在、それに匹敵するような出来事や現象が現在進行形で起こっているのです。