ベトナムのパートナー探しは“飛び込み”で

会社員としては数々の実績を挙げてきた星田さんだが、アパレルの世界はまったくの素人。それなのになぜ、ワンピース1万8000円、ジャケット1万9000円など、アイテムごとに一律料金、しかも1万円台でフルオーダーメイドの洋服が作れるのだろうか。

「ベトナムに、30~40人のお針子さんを抱えるパートナーがいて、そこが生地在庫のリスクも抱えてくれています。また当初こだわったとおり広告も出していないので、値段を抑えられています」

ベトナムで、生地を選ぶ星田さん
ベトナムで、生地を選ぶ星田さん(写真=本人提供)

そのパートナーとは飛び込みで出会ったというから驚く。

「当時、リクルートで海外の新規事業の提案をしていて、中国などでも当たり前のように飛び込み営業をしていました。それでフィットミーを始めるときも、同じようにベトナムで飛び込み営業をしました。そうして出会ったのが今のパートナーです」

ベトナムを選んだのは、日本人と感性が合うからだという。

「私はもともと海外旅行が好きで、香港やタイ、フィリピン、中国など、いろいろな国で洋服をオーダーメイドで作ったことがありました。その中でもベトナムは、ちょっとしたギャザーとか、こまやかなラインとか、日本人好みの感性を持っている。しかも、かつてフランス領だったということもあって、すごくセンスがいいんですよね。私が会社に着て行くと必ず褒められていました。私が好きだということは、ほかの日本の女性も好きなんじゃないかというのが頭の片隅にありました。加えて、縫製もしっかりしているし、納期も守るし、人柄もいい。やるならベトナムと思いました」

1カ月無給の“現地修行”で洋服づくりを学ぶ

アパレルの経験もなく、洋裁の技術も知識もまったくなかった星田さんだが、ベトナムのオーダーメイド洋服店で“修行”もした。

ベトナムで“修行中”の星田さん。ジャケット職人さんと
ベトナムで“修行中”の星田さん。ジャケット職人さんと(写真=本人提供)

「会社の休暇を利用して、1カ月間無給で働かせてもらいました。そこでオーダーの取り方や採寸の仕方など、洋服づくりに必要なことを学ばせてもらいました。ベトナム語は全然できないけれど、なんとか英語とジェスチャーや絵でやりとりして。想いを持って仕事をしていると、国境とか言葉とか全然関係ないんですよね」

今や「親戚みたいな感じ」だというパートナーとは、13年間一度もモメたことがないという。

「受注会には、パートナーが生地を抱えてベトナムから来てくれるんです。みなさん技術が高くて作業が速いので、あっという間に何十人も採寸できる。今はコロナ禍でベトナムも大変な状況ですが、日本で売り上げを立ててオーダーをかければ、現地の雇用も守れます。私も家族を守るようなつもりで必死に頑張っています(笑)」

ベトナムで、パートナーとバイクで移動
写真=本人提供
ベトナムで、パートナーとバイクで移動