子育てインフラ整備“だけ”では、女性リーダーは増えない
日本人女性が仕事を辞める理由は、育児よりも、仕事への不満のほうが多かったのです。
だとすれば、保育園などの子育てインフラが整備されるだけでは、女性の退職は減らないでしょう。政府の介入しにくい、職場の課題の方が大きい。もちろん、子育てインフラの問題や、家庭内での役割分担、ステレオタイプなどの問題はまだまだ大きいですが、企業が女性にやりがいを持って働いてもらえるようにならないと、女性のリーダーは増えません。
男性と同じやり方ではダメ
私はアメリカやアジアを中心に、世界中の企業で多くの女性社員を見てきましたが、仕事の能力については男女差よりも、圧倒的に個人差が大きいと感じています。
しかし、女性社員にやりがいを持って長く働いてもらおうとするときには、男性社員と同じやり方をしているだけではうまくいかないことが多いように感じます。昇進に対する意欲、評価に対する受け止め方、自己PRの仕方などで、女性は男性とは異なる傾向があるからです。そしてそのやり方には、ちょっとしたコツがあるのです。
私自身がやってきたことや、ゴールドマン・サックスがやってきたことの中から、参考になりそうなものをいくつかご紹介しましょう。
コツ① 男性よりも少し多めに励ます
「とても優秀な女性に昇進の打診をしても、本人が断ってくる」と嘆く経営者や管理職の人がよくいます。これは、決して女性にやる気がないわけではありません。能力はあるのに遠慮してしまう。日本だけでなく、海外でもよくみられる傾向です。こうした場合、私は必ず「一度打診して断られただけであきらめたんですか?」と聞くのですが、するとだいたい「そうです」と言われます。
こういう場合の私の提案は、もう一度打診してみることです。そして2回目の打診では、その人の直接の上司ではなく、そのまた上の上司から話してもらうことをお勧めします。その際には、「あなたをこのポストに推薦している理由は、こんなふうにたくさんあります。絶対大丈夫だと思ったからこそ推薦したんです。必ず私たちもサポートするから、もう一度考えてみたらどうですか」と話してもらいます。
これを読んでいる女性読者の中にも、心当たりがあるという人は多いのではないでしょうか。自分を過小評価してしまったり、遠慮してしまったり。あと一歩がなかなか踏み出せない。女性は男性よりも、少しだけ多めに励まし、背中を押してあげる必要があるのです。