「cotta(コッタ)」は、お菓子・パンづくりの材料や道具のネット通販で知られる会社。黒須 綾希子さんは2020年に創業者である父親の後を継ぎ、同時に東京から本社のある大分県へとUターンした。彼女が業績を伸ばすために打った手とは、そして2代目社長になるまでに味わった悔しさと孤独とは──。

父に勧められて軽い気持ちで入社

cottaは、今年3月に旧社名から商号を変えたばかり。元の社名は「タイセイ」といい、1998年に大分県で創業。当初は、全国のお菓子屋さん向けに菓子用資材の通販を手がけていたそうだが、2006年に一般消費者やプロ向けの通販サイト「cotta」を立ち上げると、これが主力事業となって大きく成長。「お菓子・パンづくりの材料や道具が何でもそろう」と評判になり、業績を伸ばしていった。

cotta 代表取締役社長 黒須綾希子さん
cotta 代表取締役社長 黒須綾希子さん

このcotta成長の立役者が、創業者の長女・黒須綾希子さんだ。元は東京の人材サービス会社で働いていたバリバリの営業ウーマン。残業も休日出勤もいとわず猛烈に働いていたそうだが、さすがに疲れを感じて転職活動を始めたところ、父親から「うちの会社に入ってはどうか」と勧められたという。

「そう言われて驚きましたね(笑)。父は『家族に継がせるつもりはない』が口ぐせだったので、私も継ぐのはもちろん入社も考えたことがなかったんです。でも、東京で働くうちに大分との縁が薄れてしまったのは寂しいなと感じていました。家業なら東京と九州を行き来できるし、と当時は軽い気持ちで入社を決めました」

タイセイの拠点は大分だが、cottaのマーケティングやPR活動を行うには、東京で活動する社員が不可欠。これが黒須さんの希望とぴったり合い、普段は東京で働き本社会議の際には大分に帰る「2拠点生活」が始まった。