最初は「制度」のせいにしていた

昨年(2019年)7月から月1回の集まりがスタート。バラバラな業界から集まった男性管理職からなる6~7名の分科会では、それぞれOBN解決につながるテーマを考え、議論する。栗原さんが加入した分科会のテーマは「制度の運用を考える」。女性活躍推進が進まないのは制度に問題があるから。じゃあどうすればいいか……というわけだ。

2回、3回、4回と分科会の回数を重ね、女性活躍のために設けられた制度を洗い出し、議論・検討した。仕事上のシガラミのない、他社の人々と一緒にいた事の有益性については、栗原さんに限らず、航空、素材メーカー、金融、コールセンターなどさまざまな業界から参加したどのメンバーも感じていたようだ。

「社内だと、ヒエラルキーや人間関係に気を使って、『ここは問題だと思います』とはなかなか発言しにくいかもしれません。でも、全然関係のない他社の方々といっしょになって毎回議論する場だと、素が出るというか、どう解決すればいいかに対するその人の普段の素直な気持ちが出るというのが、この研修の大きいところかなと思います」

「制度の穴」は見つからず

しかし、なかなか制度の“穴”が見えてこない。「どの制度の何が悪いのかを掘り下げるような作業をしていたのですが、いろいろ調べていってもなかなか出てこなくて……」。内永理事長やJ-Winの理事、アドバイザーも含めたいろいろな人にアドバイスを求め、口頭で知り合いの女性に聞くなどしても進展なし。

突破口、というより転換点を見いだしたのは、開始から半年以上が過ぎた頃だった。

「ある女性社員が『制度に不満はない』と言ったのを聞いて、制度自体にそんなに不満があるわけじゃないんだと気づきました」

栗原さんは3カ月に1回程度、分科会の活動内容を職場にフィードバックしていた。ランチイベントなどで、社内の男性相手にしばしば「皆さん知ってますか?」などとOBNについてレクチャー。ただ、「制度に問題あり」と話を振っても反応薄だったようだが、社内メンバーの小規模の集まりで、年次が下の女性社員から、「トーマツの制度じたいはすごく充実していると思います。不満はないです」とハッキリ言われたのだという。

「ある時ひらめいたんです。どれだけ聞いても出てこないんで、悩みに悩んで……。実は問題は制度じゃないのでは? と。そこへ、『不満はないです』と耳で直接きいた。あ、やっぱりそうなのかなと」