安倍内閣が総辞職し、新たな政権が発足した。首相就任直後から20年まで、安倍政権の働き方改革の流れを改めて振り返り、その成果を検証する――。
時計と四角い木に書かれたWORK LIFEの文字
※写真はイメージです(写真=iStock.com/takasuu)

「非正規という言葉を一掃する」と言っていたが……

退陣した安倍晋三前首相のレガシーとして評価する向きも多いのが「女性活躍推進」と「働き方改革」だ。前首相は「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」の3本の矢からなるアベノミクスを掲げて経済の再生を図ろうとした。

雇用・労働分野の成長戦略が女性の就業拡大と戦力化を目指した「女性活躍推進」であり、生産性の向上と賃金の底上げを目指したのが「働き方改革」であった。しかし働き方改革に関しては、法律はできたもののその効果を見ないまま退陣してしまった。

その1つである非正規社員の処遇改善を図る「同一労働同一賃金」の法制化を念頭に安部氏は「この国から非正規という言葉を一掃する」と言っていた。ところがコロナ禍によって非正規社員の雇用そのものが失われつつある。今年4月の非正規社員は前年同月比97万人の大幅減となったが、その後も減少をたどり、7月は131万人も減少している。“派遣切り”も相次ぎ、7月の派遣労働者は125万人。6月から17万人も減少し、2013年1月以降、最大の落ち込みとなった。処遇改善どころか非正規の雇用がなくなるという皮肉な状況に直面している。