忙しいときにこそ、心と体の状態をよく観察して

繊細さんに知っておいてほしいことがあります。それは「仕事よりも心身の健康が大切だ」ということです。

繊細さんは良心的でがんばり屋。ストレスフルな職場環境でも「自分がやらなきゃ」「いま仕事を辞めたら同僚に負担がかかる」と思うあまり、限界を越えてがんばりすぎる傾向にあります。

でも、仕事がうまくいかないときって、「人が足りない」「納期が短い」「部署間のコミュニケーションがうまくいかない」など、組織全体の問題であることも多いのです。自分ひとりのがんばりで対応しようとするのは無理があります。

「しんどい状況の中、同僚もがんばっているから」「みんなストレスを感じながら働いているのだから」というのは、繊細さんがその職場にい続ける理由にはなりません。

仕事は本来、自分を幸せにしてくれるもの。繊細さんが自然体で、肩の力を抜いて実力を発揮できる仕事が世の中にあります。自分に鞭打つようなストレスフルながんばりはあくまで「期間限定」にしてください。自分に鞭打つがんばりが長期間続いているのなら「何かおかしい」と疑問を持たねばなりません。「この働き方をこれからも続けていくんだろうか」と、立ち止まって考える時間が必要です。

仕事のストレスが強いからと繊細な感覚を封じるのは、雪山で寝るようなもの。感覚が鈍ると、ストレスがかかっていることがわからなくなり、気づいたときには心身ともに疲弊しきっているのです。

忙しいときこそ、繊細な感覚で、心と体の状態をよく観察してください。肩こりはどうか、胃の調子はどうか。女性なら生理痛はひどくなっていないか。楽しいことを楽しいと感じられるか、電池が切れるように眠るのではなく、心穏やかに眠れているか。

体の調子が悪いようなら、回復するまでは残業を減らす、休暇をとるなど自分を休ませてあげてください。心身を壊してまでやるべき仕事など、ないのです。

「この仕事/職場にい続けたらまずい」

そう思ったら、同僚にどれだけ迷惑をかけようと、仕事の責任が残っていようと、すべて放り出して全力で逃げてください。

人生には逃げるべきときがあります。仕事よりも他人よりも、自分の心身を最優先にしてください。

自分をまるごと引き受けて生きていく

おいしいごはんを味わって食べること、「娘のまつげが伸びた」という夫の観察眼に惚れること、相談者さんと深く心の内を話し合うこと。

武田友紀『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本』(飛鳥新社)

繊細さはストレスを感じやすいという大変な面もありますが、気持ちいい、嬉しいなど、幸せを深く味わえる、とてもいいものです。

繊細さんにとって繊細さは、自分を構成する大切な一部分。繊細さを「いいものだ」と受け止めることは、自分を「いいものだ」と肯定することにつながります。

「私には、繊細なところも大雑把なところもあるよ。それが私」

そんなふうに、自分をまるごと引き受けて生きていけたらいいんじゃないか。そう思っています。

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武田 友紀(たけだ・ゆき)
HSP専門カウンセラー

メーカーでの研究開発を経て独立。フリーのカウンセラーとして個人向けの人間関係カウンセリングや適職診断を行う。著書に『「繊細さん」の本』『「繊細さん」の幸せリスト』ほか。繊細の森にてコラム掲載中