自己肯定感が高い人は意見の違いに柔軟に対応できる

それに、同じ人でも、立場や時期や状況が違うことで、質問や問題への答え・対応が変わってくることも、いくらでもあり得ます。

井上智介『職場での自己肯定感がグーンと上がる大全』(大和出版)
井上智介『職場での「自己肯定感」がグーンと上がる大全』(大和出版)

つまり、人によって考え方が違うのは当たり前で、自分自身の中でも、時とともに考えが変化することも十分にある。

だからこそ、誰かの意見が100%正しいなどということはほとんどなく、そこを求める必要も一切ありません。

自己肯定感が高いと自然とこのことに気づき、意見がぶつかった時は、自分も正しいし、相手も正しいと考えられるようになります。

その場の状況を冷静に分析し、どのような選択をすればいいかを考えた結果、「お先にどうぞ」の精神で、相手の意見を尊重して最優先にすることもあります。

ただし、自分の正しさも心の中で認識できているので、決して自己否定には至らないのが特徴です。

逆に、自分の意見が採用された時も、決して相手の意見を否定したりしません。

それは、時間がたてば、自分も相手のような考えや答えに至ることが十分にあり得ると知っているからです。そこで相手を否定してしまうと、将来的に自分の行動や考えの選択肢を、自ら潰してしまうことになりますからね。

マウンティングしてくる人への対処法

相手が自身の意見が採用された時に、「私の正しさが認められたんだ」と強く意識して、こちらにマウンティングしてくるケースもあります。もうおわかりだと思いますが、そのような相手は、決して自己肯定感が高い人ではありません。

むしろ、「かなり不安の強い人」だと考えていいでしょう。今まで自分の意見が通ったことがなく、つらい思いをしてきたのかもしれません。

そうした不遇な過去に思いを馳せつつ、あえて“上から目線”で「かわいそうな人だなあ」と流すだけでOKです。

忘れてほしくないのが、自分も相手も、どちらかが100%正しくて、もう一方が100%間違っていることなどない、ということ。

精神科医のトーマス・A・ハリス氏が著したように、「I’m OK, You’re OK.(あなたも私も大丈夫)」の心構えを自分のものにするために、意識的に口に出していきましょう。

写真=iStock.com

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。