「トレーニングの中には、一列に並んで『結婚している人は前に出てください』『女性は前に出てください』などと言われて、該当者=アウトサイダーは前に出て、そうでない人=インサイダーはそのまま残るというワークがありました。そこで初めて、自分がインサイダーにもアウトサイダーにも成りうることに気づいたんですね。アウトサイダーになると落ち着かない気分になり、必要以上に頑張ろうとプレッシャーを感じることもありました」
そのときに思ったのは「女性は職場では常にこの感覚を持っているのかな」ということ。そう思うとリーダーとして、一人一人の状況に応じてどうサポートしていくべきか、考えなければいけないと感じた。
「研修を受けてからは、質問するときは、なるべく先入観を持たない、先に自分の話をして心を開いてもらうようにするなど、部下との接し方に気を配るようになりました」
現在、P&Gの女性管理職の割合は36%と、決して低くはない。
「目標である50%を達成するためには何が必要なのか。MARCはその数字を達成するために重要な位置づけにある」と松野さんは語る。
アクサ生命保険の場合
バイアスの取り組みはeラーニングからスタート
アクサ生命保険のアンコンシャス・バイアスに関する取り組みは、2012年のeラーニングが最初。「人がバイアスを抱いているときの脳や感情の動き、それをどうコントロールすべきかを体験できる、フランス発の理論に裏付けられたプログラムでした」
人事担当の小山恵美子さんは話す。しかし日本の慣習とかけ離れた部分もあり、現状の課題に応じた施策が行われた。代表的なプログラムは2つ。1つは13年より毎年開催している“女性会議”。19年より“ジェンダーダイバーシティカンファレンス”と名称を変えた。基調講演やディスカッションを盛り込み、男女双方が活躍できる職場づくりを提案する。19年の基調講演には、早稲田大学大学院教授の入山章栄氏が登場。「ダイバーシティは女性のためではなく、経営のために必要なことがわかった」といった意見が出た。
もう1つはスティーブン・R・コヴィー氏の著書『7つの習慣』を、1泊2日のワークショップ形式で学ぶプログラム“7つの習慣”だ。特にこのプログラムが自分の中のバイアスを乗り越える助けになったと話すのは、1カ月前に部長相当の管理職に抜てきされた荒巻智佳子さんだ。
「プログラムはグループワークが中心で、成長・成功につながる原則や価値観について意見を出し合って発表します。参加者たちは、自分からリーダーを引き受ける積極的な人ばかり。私も刺激を受けて、進んでやろうという気持ちになりました」