途中でやめたってかまわない

音楽も楽しんでいます。75歳からピアノを習い始め、最近まで続けていたのですが、85歳になると指が思うように動かなくなって……。パソコンは指1本でも打てますが、ピアノはそういうわけにはいきませんからね。でも今は楽譜を読み取って演奏してくれるような音楽ソフトがありますから、そういったものを使って楽しんでいるんです。

●年ごろの若宮さん(写真=本人提供)
30代初めごろの若宮さん(写真=本人提供)

「学び続けるにはどうしたらいいのでしょうか?」

若い人たちからよく聞かれる質問です。私が学び続けている理由は、「楽しいから」ということもありますが、「若い頃に向学心が満たされなかったから」というのも大きいかもしれません。

私が小学生の頃は戦争中でしたから、外国の歌は歌えなかったり、本も思うように手に入らなかったりと、できないことがたくさんあったんです。中学生くらいになってようやく児童向けの本が手に入るようになったので、むさぼるように読みました。おなかも満たされていなかったけれど、向学心も満たされていなかった。飢餓感があったから、今も「勉強ができてうれしい」「本が読めてうれしい」という感じなんです。

でも、何か勉強を始めたからといって、「とことんモノになるまで続けないといけない」とは思いません。そこは無理をしなくてもいいと思うんです。途中でいやになったらやめてもいいんです。

私は若い頃に日本舞踊を習っていましたが、からっきしダメで、モノにならずやめてしまいました。でも、日本舞踏で使われる楽曲がわかるようになったので、歌舞伎を楽しめるようになったんです。何かを学ぶと、始める前より確実に知識が増えている。途中でやめても、知識はちゃんと残るのです。だから全くのムダにはなりません。

ですから、ちょっとでも興味を持ったならば、やってみたらいかがでしょうか。

私は80歳を過ぎてからプログラミングを学び始めましたが、「よくそんな決断をする勇気がありましたね」と言われることがあります。でも、私がプログラミングをしたからといって誰が困るわけでもないし、ソフトも無料でダウンロードできるからお金もかからない。仕事として引き受けているなら、途中でやめられませんが、趣味なんですからいつでもやめられます。

逆に「どうして決断や勇気がいるんですか」と聞いたら、「挫折をするのがこわいんです」と答えた方がいらっしゃいました。でも私は、失敗はたくさんしたほうがいいと思うんです。失敗の積み重ねこそが、何かを作り出す力のもとになりますから。