「コロナが落ち着いてから」が問題を深刻化させる

帰省は将来起こり得る問題を早めに解決するチャンスであり、人間関係をメンテナンスする手立てのひとつでもあります。お盆やお正月に帰省すれば、親の体調の変化に気づくこともできますし、家族のつながりも深まって互いに問題を話し合いやすくなるでしょう。

そのため、少子高齢化している現代でこそ、本来ならお盆と正月には帰省することをお勧めしたいのですが、今年の帰省にはコロナウイルス感染のリスクがつきまといます。国が推奨している「オンライン帰省」も、高齢者には情報機器の操作が苦手な人も多いため、思うようには進まないだろうと思います。

こうした事態は、家族関係にどんな影響を与えるのでしょうか。まず考えられるのは、親の体調の確認や話し合いを要する問題がすべて「コロナが落ち着いてから」と凍結されてしまうこと。でも、その間にも親の高齢化は進みます。直接会えるようになった頃には、体調も問題も悪化してしまっているかもしれません。

もうひとつの影響は、家族・親戚間トラブルの長期化です。介護やお墓、実家の維持管理などにまつわる問題には感情も入ってきますから、話し合いを先送りにすればするほど深刻化する傾向にあります。「コロナ後」を待つことによって、問題が余計にややこしくなってしまう可能性は大いにあると思います。

コロナ後を待たずしてできることはないか

家族にまつわる問題は、いったん深刻化してしまうと人間関係も悪化して、余計に話し合えなくなるという悪循環が生まれることがあります。今は皆が「コロナ後を待つ」姿勢なので表面化しにくいですが、これからは家族・親戚間の長期トラブルを抱える人が増えてくるのではないでしょうか。

このように、「帰省できないお盆」は家族・親戚関係にさまざまな支障をもたらします。帰省できないけれど早めに話し合いたい問題がある──。そんな人は、コロナ後をただ待つのではなく、お盆期間のうちに電話で話してみてはどうでしょうか。

電話には、対面に比べて込み入った話がしにくい、長くなると疲れるといった欠点がありますが、問題を完全に凍結してしまうよりは、多少面倒でも少しずつ話を進めたほうがいいと思います。それが難しければ、簡単な会話をしておくだけでもOK。心のつながりを保つのに役立ち、のちのちの話し合いもしやすくなるでしょう。