ストレスそのものに対処する3つの方法

ストレスに強い人の特性を見てきましたが、ストレスそのものに対処する方法もご紹介しておきましょう。ストレスコーピングといわれるもので、3種類あります。

(1)問題焦点型コーピング

ストレス源にがっちりと向き合って、直接アプローチする方法。その向き合い方には、すぐに解決しようとする「即時タイプ」と、何かあったときに取りかかる「遅延タイプ」があります。

「即時タイプ」は、たとえば何か困りごとが起こったら、専門家なり上司なりに相談して、問題を正面から扱ってストレス源をなくしていこうとするものです。例えばストレス源となる人から離れるために異動の希望を出したり、ストレスフルな仕事に対して「私にはできません」と断るなど。

「遅延タイプ」は、ストレスになることが起きてもしばらく様子を見、周囲の協力も得ながら解決を目指していくものです。

(2)情動焦点型コーピング

ストレスを感じたときに生じるネガティブな感情を発散していく、いわゆるストレス発散です。

たとえば、みんなで飲みに行ったり、スポーツをしたりして、嫌な気持ちを発散させる、あるいはストレッチやアロマテラピー、瞑想などで、嫌な感情を受け流す。ストレス源には直接タッチせず、いかに嫌な気持ちを解消するかを重視します。

なかでもウォーキングやストレッチなどの軽い運動は、ストレスを発散できるうえに、リラックスもできるのでおすすめです。夜寝る3時間前に終わらせると、良質な睡眠が得られます。

また外の風を感じたり、葉のゆれる音を聞いたり、雨のにおいを感じたり……、公園などで10~15分、落ち着いて自然を感じることも、テレワーク時代におすすめのストレス発散方法です。

ストレス発散=趣味と考えがちですが、趣味でなくても、自分がホッとできる時間を持てれば、それでOK。一人でゆっくりカフェで過ごすのが落ち着くとか、家で家族と話すとホッとするとか、それで十分なのです。

意外とそういう時間をとっていない人が多いので、ぜひ積極的にとってほしいですね。

(3)認知的再評価型コーピング

問題の状況に対して、自分の考え方を柔軟に変更して、ストレスをコントロールしていく方法。よく知られているのは「リフレーミング」です。

たとえば、自分にだけ当たりがきつい上司がいるとします。そうすると、たいていは「自分が嫌われている」とか、「自分のできが悪いからだ」などとネガティブに考えがちですが、逆に「期待しているからこんな言葉をかけるんだろう」と、こちらの考え方を変える。

コロナによる外出自粛も、外に出られないという制限があったからこそ、子どもといっしょに遊ぶ時間が増えたとか、オンラインで飲み会や習い事ができることを発見したとか、マイナス面ばかりでなく、プラス面でとらえ直すのがリフレーミングです。

手軽に取り組めるストレス耐性を高める方法としては、(2)情動焦点型コーピングと(3)認知的再評価型コーピングがとくに重要。自分なりのストレス解消法を見つけたり、リフレーミングで考え方を変えたりといったことは、ふだんの習慣として身につけておきましょう。

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井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。