ストレスフルな状況下でのびのびしている人の秘密
私たち人間が生きていくためには、新型コロナウイルス感染症問題に限らず、変化に適応する力を身につけることは非常に大切です。
実はこういったストレスの多い環境下でも、なぜかイキイキとしている人もいます。その違いはなんでしょうか。ポイントは3つあります。
ストレスに強い人の特徴1:有意味感
有意味感とは、急な環境の変化やつらいこと、面白くないことがあっても、そこに何かしら意味が見いだせる感覚のこと。こじつけでも、これが自分に何か意味があるんじゃないかと思える感覚を持っている人はストレスに強いですね。
有意味感のある人は、会社の中で、希望しない仕事や誰もが嫌がる仕事をするときも、ただ嫌だなと思ったまま取り組むのではなく「どこかでこの経験が役に立つかもしれない」「みんなが嫌がるなら、逆にアピールできるチャンスになるかもしれない」と前向きに考えられます。今のように環境がガラッと変わったときも、タフに生き抜ける代表選手ですね。
ただ、とくに若い人の中には、効率や自己実現を優先するあまり、意味を感じないことをしたがらない人が増えています。何か頼むと「これをやる意味があるんですか?」などと返されたことがある人もいるのでは。これでは、なかなか有意味感が育ちません。
こういった部下の有意味感を育てるには、「役に立った」という経験を積ませるこが大事です。小さなことでも褒めて、フィードバックする。そうすることで、自分は意味のあることを経験しているんだなと思い、有意味感が育っていきます。
ストレスに強い人の特徴2:全体把握感
これは全体のプロセスをざっくりと見通せる感覚です。つまり自分の身の回りで起こることは、だいたい想定の範囲内かなという感覚を持てている人は、精神が安定していて、ストレスに強い。
たとえば、今回のコロナ問題なら「何となくだけど、10年後は続いていないだろう」とか、仕事であれば「あと3週間ぐらいで、しんどいのは終わるな」とか……。
この全体把握感がないと、未知のものが多すぎて、閉塞感を強く感じます。自分が暗闇に閉じ込められている気持ちになり、やがて精神的にダウンしてしまうことが多い。やはり全体を見渡せる能力がある人は強いなという印象です。
この感覚を高めるポイントは、先が見えなくなったときにいったん立ち止まって、自分が把握できていないところはどこかを考えること。そして、わからないことに関しては、自分でできる範囲で調べる、解決してみるということです。
ただし今回のように、誰もが先行きの見えないようなときは「やってみるしかない」という当たって砕けろの意識も大切です。全体把握感のある人は、コロナによってこれまでになかったような初めての状況に直面しても「対応していくしかないよね」と思ったはず。そうして新しいことを経験するごとに、「想定の範囲」が広がっていくのです。
ポイント3:経験的処理感
これは今までの経験からいって「ここまでならできるけど、この先はわからない」ということが一瞬でつかめる感覚です。つまり、ここまできたら、誰かに助けを求めたらいいんだな、ということが分かっている人は、本当にストレス耐性が高いです。
今回のテレワークに関していうと、急に環境が変わって、ここまでの環境は自分で整えられるけど、この先は誰かに聞かないと無理だなと自分でわかっているということ。無理なら誰かに助けを求めることが必要で、それができない人は一人で抱え込んでしまい、精神的に不調に陥っていくのです。
経験的処理感を高めるのも、全体把握感と同様に「当たって砕けろ」精神で、ある程度経験し、自分の中のできる範囲を客観的にみていく必要があります。
急にテレワークになって、最初は「どうなっちゃうんだろう」と思った人も、やってみると「意外にできる」と思えた。これも経験的処理感を高める行動なのです。
ストレスそのものに対処する3つの方法
ストレスに強い人の特性を見てきましたが、ストレスそのものに対処する方法もご紹介しておきましょう。ストレスコーピングといわれるもので、3種類あります。
(1)問題焦点型コーピング
ストレス源にがっちりと向き合って、直接アプローチする方法。その向き合い方には、すぐに解決しようとする「即時タイプ」と、何かあったときに取りかかる「遅延タイプ」があります。
「即時タイプ」は、たとえば何か困りごとが起こったら、専門家なり上司なりに相談して、問題を正面から扱ってストレス源をなくしていこうとするものです。例えばストレス源となる人から離れるために異動の希望を出したり、ストレスフルな仕事に対して「私にはできません」と断るなど。
「遅延タイプ」は、ストレスになることが起きてもしばらく様子を見、周囲の協力も得ながら解決を目指していくものです。
(2)情動焦点型コーピング
ストレスを感じたときに生じるネガティブな感情を発散していく、いわゆるストレス発散です。
たとえば、みんなで飲みに行ったり、スポーツをしたりして、嫌な気持ちを発散させる、あるいはストレッチやアロマテラピー、瞑想などで、嫌な感情を受け流す。ストレス源には直接タッチせず、いかに嫌な気持ちを解消するかを重視します。
なかでもウォーキングやストレッチなどの軽い運動は、ストレスを発散できるうえに、リラックスもできるのでおすすめです。夜寝る3時間前に終わらせると、良質な睡眠が得られます。
また外の風を感じたり、葉のゆれる音を聞いたり、雨のにおいを感じたり……、公園などで10~15分、落ち着いて自然を感じることも、テレワーク時代におすすめのストレス発散方法です。
ストレス発散=趣味と考えがちですが、趣味でなくても、自分がホッとできる時間を持てれば、それでOK。一人でゆっくりカフェで過ごすのが落ち着くとか、家で家族と話すとホッとするとか、それで十分なのです。
意外とそういう時間をとっていない人が多いので、ぜひ積極的にとってほしいですね。
(3)認知的再評価型コーピング
問題の状況に対して、自分の考え方を柔軟に変更して、ストレスをコントロールしていく方法。よく知られているのは「リフレーミング」です。
たとえば、自分にだけ当たりがきつい上司がいるとします。そうすると、たいていは「自分が嫌われている」とか、「自分のできが悪いからだ」などとネガティブに考えがちですが、逆に「期待しているからこんな言葉をかけるんだろう」と、こちらの考え方を変える。
コロナによる外出自粛も、外に出られないという制限があったからこそ、子どもといっしょに遊ぶ時間が増えたとか、オンラインで飲み会や習い事ができることを発見したとか、マイナス面ばかりでなく、プラス面でとらえ直すのがリフレーミングです。
手軽に取り組めるストレス耐性を高める方法としては、(2)情動焦点型コーピングと(3)認知的再評価型コーピングがとくに重要。自分なりのストレス解消法を見つけたり、リフレーミングで考え方を変えたりといったことは、ふだんの習慣として身につけておきましょう。