3.“母親”であることの評価が肩書によって大きく異なる

通常、履歴書に子どもの有無などは記載しません。ところが、上位職採用への評価の際、保護者会メンバー、などといった記述を含め、母親であることがわかるような記載をした履歴書は、そうでない同等の履歴書に比べ、約2倍も採用率が低くなったり、下位の職に割り振られることが、やはり米国の研究から明らかにされています。ところが、子どもを持つ女性がひとたびリーダーシップを発揮できるような職に就くと、一転、評価が一気に上がることが示されています。つまり、職に就きさえすれば成果をだせるわけですから、採用時に不利になることは根拠のないバイアスからくるものと考えられます。

4.日本の高学歴専業主婦のジェンダーバイアス

日本では、特に50代以降で高学歴の専業主婦は、就職を希望していたのに、専業主婦になった割合が高いことが知られています。人は、自分の中に起こっているこのような矛盾を解消するために、現状を合理的に考えるような意識が働くようにできています。そのため、家事や育児、働くことで生じるジェンダーバイアスについて、不公平だと思わなくなる傾向があることが日本の研究により示されています。さらに、高収入な夫を持つ女性も、そのような傾向があることが示されています。

一方、学歴が高く、家計を支えることへの貢献度が高い女性ほど、家事や育児に関するジェンダーバイアスが低いことが示されています。一部で“うちのイクメンパパ”、“家事力が高い旦那様”のさりげない自慢が横行するのには、このような背景(男性も家事や育児をするのが当然、という意識がまだまだ少ない)があるのかもしれません。女性の中にも、家事や育児に関するジェンダーバイアスが根強く残っているのです。

5.女性はリーダーシップと理系が苦手というバイアス

女性CEO、男性CEOで仕事上の成功や失敗に差がないことが示されていますし、客観的な業績評価で上位数パーセントを見たときに、男女で業務への能力差がないことも示されています。

日本では近年、医学部の合格者で、性別による人数操作が行われていたことが明るみに出ましたが、大規模な米国の研究から、女性医師が担当した患者は男性医師が担当した患者よりも統計的に臨床成績がよいことが報告されています。

その他、女性のリーダーは男性のリーダーシップとは違う形でその力を発揮することがわかっていますし、女性は◯◯が苦手(数学など)、などというものは、女性が男性に比べて能力が低い、あるいは男性脳・女性脳があるのではなく、ジェンダーステレオタイプ脅威(女性は苦手だという固定観念が、本来の能力とは関係なく、そのような結果を生み出してしまうこと)の結果であることが十分に示されています。