長い投資経験がある人も耐えられず……

ひとつは株式市場の右肩上がりトレンドを前提に最近長期投資を始めたばかりという人たちが、想定外の急激な下落相場で底なしの恐怖に襲われ、瞬発的に投資をやめて全額売却へと動いてしまったケース。

もうひとつは結構長い期間にわたって長期投資を続けてこられた方々で、相場が下落するたび毎日それまでの含み益が減っていくのを見て、何とか損失になってしまう前にと慌てて手放してしまったケースです。

いずれもその瞬間にはもっと下落すると判断して、投資家で居ることを放棄してしまったわけです。

この当時は更に下落が続くというムードが相場を覆っていましたが、急落が起こってから1カ月後には世界のマーケットが底打ちに転じました。先進主要国の迅速かつ大胆な金融緩和と巨額の財政投入が好感されたのです。こうした相場の潮目の変化はプロにとっても想定外に早く転換点が訪れました。このリバウンドは一時的なもので、再び下落に転じると考えていた投資家も多かったと思いますが、それからは総じて右肩上がりの回復です。

マーケットの見据える先はアフターコロナの新たな社会構造を前提にした経済成長の期待に向き始め、米ナスダック市場ではGAFAに代表されるIT大型銘柄が主導して再び史上最高値を更新しました。米欧日先進国に加え新興国の株式市場も連鎖して、コロナショック前の水準へ向けて上昇基調が続いています。

投資をやめてしまった人を待ち受けるもの

急落局面で投資をやめてしまった人たちの中で、始めて間もなかった人は短期間で損した体験だけが残り、これまで長期間投資を続けてきたのに降りてしまった人は、それまでの投資期間がすっかり無駄になってしまい、下落のあとにやってきた急回復相場の恩恵を受けることが出来なかったのです。

長期積立投資で資産形成を始めた人は、ゴールをずっと先の将来に置いていたはずなのに、目先の相場環境変化に耐えられず、目的を逸脱した行動をとってしまった。長期投資で将来の成果を実現するための肝は、途中で投資行動を変えないことです。ずっと投資家で居続けることによって下落相場にも遭遇しますが、必ず上昇相場にも乗っていられるのです。

常に同じ投資行動をとり続ける

当然のことながら、長期投資でお金が育つ時期は上昇相場です。長期的な経済の成長軌道に乗って経済活動の中でお金を育てていくのが、真っ当な長期資産形成のコンセプトなのです。

相場は短期的にはデタラメに上下動を繰り返します。コロナという短期的な相場の下落要因は、コロナが収束する前提でやがて在るべき水準に回帰し収斂するのですが、今回は特にマーケットがそれを先取りして早々に回復したわけです。将来にわたって経済成長が持続しているならば、やがて成長に相応な水準へと価格は上向いていくはずです。

繰り返しお伝えしますが、長期的な経済成長の果実をしっかり享受するには、下落を忍耐強く乗り越えて、上昇相場でお金をしっかり育てていくことが肝要です。つまりはいつも同じ投資行動をとる。即ち投資を継続することで、総体的に成長の養分を相応に取り込んでお金は育つのです。