女性は「損することがわかっている」勝負を嫌う

ここからわかるのは、女は男より競争に消極的なのではなく、「勝率を冷静に計算している」らしいことだ。成功の見込みが高いと思えば、女は男より冒険的になる。「女性は戦略的に競争に参加するかどうかを考え、きわめて慎重に行動している」のだ。

橘玲『女と男 なぜわかりあえないのか』(文春新書)
橘玲『女と男 なぜわかりあえないのか』(文春新書)

競争には負けるリスクがある。多くの時間、金、感情を投資するほど、負けたときに失うものも多くなる。このリスクを女の方が正確に判断できるとすれば、「損することがわかっている」勝負を嫌うのも当然だ。

ジェンダーギャップ指数が世界最底辺の日本では、国会はまだマシで、地方議会には女性議員ゼロのところも多い。“重鎮”などと呼ばれる男の政治家は「選挙に出ようとする女性がいない」と開き直るが、問題はこの「おっさん」たちが自分の議席にしがみついていることにある。当選確率が低ければ(現職議員を破るのは難しい)、リスクに敏感な女性は出馬を尻込みするだろう。

だとしたら、フランスなどのように女性に一定の議員数を割り当てるクオータ制にも一考の余地がある。女は男よりずっと「合理的」なのだから、制度的に当選確率を上げれば「政治的野心」が高まって、優秀な女性候補者が続々と現われるだろう。

38 Sarah A. Fulton, Cherie D. Maestas, L. Sandy Maisel and Walter J. Stone(2006)The Sense of a Woman: Gender, Ambition, and the Decision to Run for Congress, Political Research Quarterly

写真=iStock.com

橘 玲(たちばな・あきら)
作家

2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎文庫)、『言ってはいけない』(新潮新書)、『バカと無知』(新潮新書)、『シンプルで合理的な人生設計』(ダイヤモンド社)など著書多数。