勝てると思えば、女性は男性以上にリスクを取る

ではなぜ、女性地方議員の平均年齢は高いのだろうか。その理由を示したのが図表1で、子どもがいるかいないかで政治的野心がどのようにちがうかを調べている。

(年齢など)他の条件が同じで子どもがいなければ、男女の「野心」はほぼ同じだ。女性地方議員は、男性と同様に連邦議会を目指そうとする。

ところが子どもがいると、結果は大きく変わる。

男の地方議員は、子どもを持つことで野心がさらに大きくなる。「よき父親」であることが選挙を有利にするからだろう。

ところが女の地方議員は、子どもがいると逆に野心を失ってしまう。これにはさまざまな理由が考えられるが、研究者は、「母親が(幼い)子どもといっしょにいたいと思い、社会もそれを当然と考えるから」だと述べている。

日本では、子育てが一段落してから働く母親が非正規の仕事にしか就けないことが問題になっているが、アメリカの政治家も同じで、子どもの手が離れてから政治にかかわるため、地方議員を何期か務めたあとに連邦議員に挑戦しようとする頃には、自分が年をとりすぎていることに気づくのだ。──幼い子どもがいる女性政治家は、子どもと離れてワシントンに「単身赴任」するより、自宅から通える地方議会を選ぶだろう。

主観的な当選可能性による「政治的野心」のちがい

フルトンはこの調査で、もうひとつとても興味深い発見をした。それが図表2だ。

ここでは(子どもの有無など)他の条件が同じ場合、主観的な当選可能性(どの程度選挙に勝てると思っているか)で政治的野心がどう変わるかを示している。破線が「平均的な野心の持ち主」で、実線が「野心家」だ。

意外なことに、主観的な当選可能性が高くなるにつれて女の野心は急速に大きくなる。それに対して男の野心は、当選可能性にそれほど影響されない。誰が考えても当選できそうもない(本人もそう思っている)ときでも、男は勝負に打って出るのだ。

男が“一発逆転”を狙うというのは進化論による説明と整合的だが、「勝てると思えば女の方がリスクを取る」ことまでは予想できなかった。データでは、主観的な当選確率が20%を超えると女の野心は男性を上回るのだ。