「手柄泥棒」とはどう付き合うべきか

職場には、一緒に働くことで、こちらの仕事の効率が落ちてしまうけれど、一緒に働かないわけにはいかない人がいます。そのくせ、いざ仕事がまとまると、人の成果(手柄)を横取りしようとする――。そんな手柄泥棒が少なからずいることも事実です。

武神健之『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』(PHP研究所)
武神健之『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』(PHP研究所)

では、このような人にはどのように対応するのがよいのでしょうか。

職場の人間関係に悩まず出世する人たちは、手柄を横取りされる前に、その(厄介な)人の上司に対して、あえて自分から「○○さん(厄介な人)のおかげです」と、その人をほめ、感謝の言葉を伝えるのです。

これを続けると、その厄介な人にとってあなたは必要不可欠な存在となり、あなたを無下にはできなくなっていくでしょう。また、次第に厄介な人の上司は「本当は誰が価値を提供しているのか」をわかってくれるはずです。

言葉を選ばずに言えば、まずは、そのときまで手柄泥棒を泳がせてしまおうということです。

職場マウンティングや陰口への対処法

世の中には、自分に自信がないぶん、他人を落とすことにより、自分の優位性を保とうとする人たちが一定数います。目の前でこれをやられれば、いわゆるマウンティング、あなたのいないところでやられるなら、それを陰口と言います。

職場の人間関係に悩まず出世する人は、マウンティングされそうになっても、相手と同じ土俵には立ちません。その会話はそこで終えてしまうか、スルーして別の会話に移ります。

陰口もまた気にしないのが一番です。それでも陰口が耳に入ってきたなら、「陰口を言われているよ」と教えてくれた人に「事実ではない」と伝え、誰から聞いたかを確認するようにしましょう。次第に、あなたの耳には、根拠のない陰口は届かなくなるでしょう。

また、多少勇気が必要かもしれませんが、もし、陰口を言っている人がわかったら、堂々と「あなたがこう言っていると私の耳に入っているが、その根拠は何でしょうか?」と聞くことも効果を発揮します。あくまでも、根拠を聞くのであって、言わないでほしいとお願いしたり、相手を責めたりはせずに、堂々と根拠を聞くのがポイントです。

他人の悪口・批判への同意を求めてくる人への対処法

これは厄介な問題です。他人のネガティブ評価への同意を求められたときは、すぐにその場で否定することが大切です。否定しないと、後々、同意しているとみなされてしまう危険性があるからです。

もしくは、真っ向から否定するのではなく、「いろいろな考えがありますよね」と返し、その場を離れましょう。それでもその人物へのあなたの意見を求められたなら、「いろいろな考え方があると思います。それぞれの立場もありますし、私はそういうことは何も考えたことがないので……」と、悪口に加担しないよう細心の注意を払うのが得策です。

写真=iStock.com

武神 健之(たけがみ・けんじ)
医師

医学博士、日本医師会認定産業医。一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。ドイツ銀行グループ、BNPパリバ、ムーディーズ、ソシエテジェネラル、アウディジャパン、BMWジャパン、テンプル大学日本校、アプラス、アドビージャパン、Wework Japanといった大手外資系企業を中心に、年間1000件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を実施。働く人の「こころとからだ」の健康管理を手伝う。2014年6月には、一般社団法人日本ストレスチェック協会を設立し、「不安とストレスに上手に対処するための技術」、「落ち込まないための手法」などを説いている。著書に、『職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書』や『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣』『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』などがある。公式サイト