もし後輩から自分もメンバーになりたいと言われたら、久保さんはどう答えるのだろう。「その人の状況にもよりますが、タニタが好きならやったほうがいいと答えます。会社と対等のビジネスパートナーのような形で仕事ができるからです」

多様な働き方ができるチームづくりを目指して

では、2人のような働き方をする部下を持つマネジャーはどのように感じているのだろう。森稔貴としたかさん(44歳。入社7年目)は、健康測定のアプリケーションを開発する部署の課長。部下には、個人事業主以外に、タニタの秋田工場のサテライトオフィスで働く社員もいる。

生産戦略本部 量産設計センター技術4課 課長 森 稔貴さん
生産戦略本部 量産設計センター技術4課 課長 森 稔貴さん

「タニタのアプリケーションは機器との接続もあり、リモートだけのコミュニケーションが難しい部分もあります。しかし個人事業主のメンバーとは自宅勤務と出社のスケジュールを共有しているので、コミュニケーションが取れないということはないですね。秋田勤務の部下とも定期的なビデオチャットでミーティングしているので、仕事に不都合はほとんどありません」。課題があるとすれば、勤務場所が違うことで、仕事以外の話をするきっかけが少なくなること。そこで2人一組で仕事をする「バディ制」を取り入れ、仕事以外の話ができるようにも努めている。

個人事業主のメンバーは、チームの主戦力だ。もし彼から他社の仕事を受けるためタニタの仕事を減らしてほしいと言われたら? 「チャレンジを応援したいが、チームとしては痛手なので複雑な気持ちになるでしょう。問題なく仕事を進めるには、業務を属人化しないなどの工夫も必要ですね」と森さんは語る。お互いに今の仕事を続けられない、または発注できない、となれば、3年の契約期間中に次の手を考えればいい。

社内結婚をして、夫が個人事業主の深山みやま知子さん(44歳。入社22年目)は、体の部位ごとの脂肪や筋肉を計測できる体組成計の開発を担当し、19年に管理職になったばかり。20代で子どもを2人出産し、子育てと両立しながら仕事を続けてきた。育休制度が現在のように整っていなかった時代、働きながらの子育ては苦労が多かったはず。まだ子育てが終わっていない深山さんならば、自身が個人事業主になって自由な働き方をしてもいいような気もするが。

夫が会社を辞めても不安はなかった

「実は夫から活性化プロジェクトのメンバーになったと聞かされたのは、すでに彼が会社を辞めた後(苦笑)。普通なら夫が会社を辞めたとなると大問題でしょう。でも長年働いている会社ですし、私も説明会でプロジェクトの詳細を聞いていましたから、それほど不安はありません。うちは下の子がまだ中学生なので、私は会社員のままがいいと思ったのです」