iDeCoについての2つの大きな改正点
今回、iDeCoに関する改正点として、話題になっているのは今までは60歳までしか加入できなかったのが、65歳まで加入できるようになったことです。今はほとんどの企業で65歳まで再雇用するという制度になっていることから、多くの人は60歳ではなく、65歳でリタイアすることになります。そこでiDeCoの積立も65歳まで続けられるようにしたということです。積立期間が長くなれば当然、その金額も増えます。現在でも女性の平均寿命は88歳ぐらいですが、恐らく今後もこの平均寿命が延びることを考えると長く働くと同時に自分自身での老後の備えを厚くすることができるのは良いことだと思います。
ところが今回、あまり知られていないのですが、iDeCoに関しては他にも意外に大きなメリットとなる改正点がありました。その改正点とは、
という二つです。これだけでは何のことかわからない人も多いでしょうが、実はこれは結構大きな変更点、それも私たちにとって、とても有利になる改正なのです。
多くの会社員にとっては事実上加入不可能だった
まず、(1)についてです。iDeCoに関する法律が改正されて2017年からは誰でもiDeCoに加入できるようになったと言われています。ところがこの「誰でも加入できる」というのは建前上ではその通りなのですが、多くのサラリーマンにとっては事実上不可能でした。なぜなら、iDeCoは「個人型確定拠出年金」ですが、別途「企業型確定拠出年金」という制度があり、これを採用している企業に勤めている場合、会社が制度に少し手を加えないとiDeCoに加入することができないからです。
具体的に言うと、確定拠出年金には掛金額に上限が決められています。企業型の場合、最も多い場合で上限は月額5万5千円です(※1)。一方、iDeCoの掛金上限額は、その人の立場によって異なりますが、この例のように企業型確定拠出年金のある会社に勤めている人の場合は最高でも月額2万円が上限となります。
※1 他に企業年金の制度が無い会社の場合
ここで仮にこの会社に勤めている人がiDeCoに加入し、自分で積み立てられる上限一杯の2万円を積み立てたいと思ったらどうなるでしょう。法律ではiDeCoの掛金と企業型確定拠出年金の掛金を合計して5万5千円を超えることはできません。したがって、この場合、会社が出す掛金の上限を3万5千円に減らさないとなりません。するとどういうことが起きるでしょう。個人が掛金を出すことで会社の負担が減ることになります。会社としてはありがたいかも知れませんが、iDeCoなんかやるつもりのない人まで会社が出してくれる掛金を減らされてしまうのであればこれはとても迷惑です。
しかもそれを決めるためには労使で合意した上で、規約を変えなければなりません。これではまず労働側から合意を得ることは無理でしょう。だから今までは建前上はできることになっていても現実には不可能だったのです。事実、企業型の確定拠出年金を実施している会社で社員にiDeCoの加入を認めているところはわずか3.6%しかありません。
ところが今回の法改正では、「規約を変更しなくてもよい」ことになりましたので、会社が出している掛金の額と企業型の上限5万5千円の間に枠の余裕があれば、その分、個人がiDeCoに加入して自分で自由に掛金を出すことができるようになったというわけです(もちろん上限は2万円ですからそれ以上は出せません)。現在、企業型確定拠出年金に加入している人は全国で約723万人もいます。これらの人達の多くがiDeCoに加入できるようになるメリットは大きいと思います。