財政赤字を是認する理論も

第二次大戦後、世界はドルが基軸通貨として覇権を握り、ドル本位制のもとで各国は通貨コントロールをしてきましたが、1970年代に入りニクソンショック以降は、ドルの発行が無制限となり、以後一貫してドルの通貨供給量は右肩上がりで増え続けています。即ちこの先もドルが基軸通貨であり続けることを前提とすれば、各国が自由にマネタリーベースを決められる現代通貨管理制度においては、通貨価値は米ドルに対する相対性で決まるものであり、ハード通貨を有する先進各国が揃って米ドルに準じて通貨供給量を増やしていくならば、発行通貨の信用が維持されている限りにおいては、通貨価値は一定の均衡が保持されるはずです。実際リーマン危機以降の米欧日による揃っての量的金融緩和政策は、顕著にインフレをもたらしていません。

この実態の中で、財政赤字は本当に減らす必要があるのか、或いは中央銀行のバランスシートは巨大化したままでは駄目なのか、既存の財政金融論的常識に対するアンチテーゼとして、それらを是認する理論も提唱され始めており、健全な国家財政や中央銀行のあり方が、実体経済や資本市場の実態に鑑みて変質していくことは、歴史的にも自然な流れなのだと言えましょう。

これからもずっと、様々な要因でマーケットは暴落と調整を何度となく引き起こすでしょうが、その都度過剰なバブルは淘汰され、優勝劣敗のふるいの基で産業界の新陳代謝が進む。そうした実体経済の健全な浄化作用が繰り返し機能することで、経済成長軌道は堅持されることを前提とすれば、世界経済の成長が生み出す将来の富をリターンの源泉とする長期国際分散投資は、アフターコロナでも合理的に報われるはずです。

そしてコロナショックの極端な相場変動下だからこそ、長期保有を前提に投資行動を継続することが何より大切で、その普遍性はコロナ後の新常態でも不変なことでありましょう。

写真=iStock.com

中野 晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信・代表取締役会長CEO

1987年明治大学卒業、クレディセゾン入社。関連会社資金運用部にて債券のポートフォリオ運用に従事後、投資顧問事業を立ち上げ運用責任者としてグループ資金運用や、海外契約資産の運用アドバイスを手がける。2006年セゾン投信を設立。