画期的な商品を生み出すには企業家精神が必要

イノベーション理論で有名なシュンペーターは、著書『経済発展の理論』(1912)で、おもしろい考察を行っています。それは“企業家が新たな需要をつくり出す”というものです。

考えてみれば消費者サイドから、従来なかった画期的な“新しい欲望”が生まれることなどありません。例えばiPhoneが便利なことは、今日のわれわれならば誰もが知っていることですが、1970年ぐらいに「あーあ、どこかにタッチパネル式の情報携帯端末、売ってないかな……」などと考えた消費者はいません。思いつかないからです。

このように、世間を揺るがすほどの画期的な商品開発のほとんどは、生産者サイドから“新しい欲望を教え込まれる”形で生まれます。そして企業家はそれらを、新しいモノを創り出すことだけでなく、“既存のモノを新しい方法で生産すること”でも実現していきます。

ただし、画期的な商品を生み出すには、さまざまな困難(保守的な上司からの反対、既得権者からの抵抗、法整備の不備など)も待ち受けています。だから企業家には、指導力や洞察力、他者への影響力、困難に立ち向かう強い意志などが求められます。

イノベーションの原動力は、「こんな商品ができたら、みんな驚くぞ!」という企業家の激しい“創造欲求・執着心・情熱”であり、そこには理性のブレーキや採算など、入り込む余地がありません。アップル製品を世に出したジョブズも言っています。「偉大な製品は、情熱的な人々からしか生まれない」――義務感で出す企画からは、いいモノはつくれても画期的なモノはつくれません。これは、かなり重要な商品開発の原点ではないでしょうか。

最初は売れた新商品、今はさっぱり売れない……

経済学がアダム・スミスをはじめとする古典学派全盛の時代には、商品価値は「生産に投下された労働量で決定する」と考えられていました。このような商品価格の決定理論を労働価値説といいます。

しかし、それを否定する画期的な経済学が登場しました。ワルラスらに代表される新古典派です。彼は『純粋経済学要論』(1874)で、商品価値に関する新たなモノサシを発表しました。“効用”です。効用とは“満足度”という意味ですが、これを基準に見ていくと、商品価値の考え方は、がらりと変わります。つまり、いかに多くの労働者が長時間かけてつくった商品でも、消費者が欲しがらなければ商品価値は低いということです。

とはいえ、その満足度も消費が続くと、だんだん下がります(=限界効用逓減ていげんの法則)。1杯目のビールはおいしくても、おかわりがつづくと、だんだんとおいしさを感じなくなるのと同じです。しかし希少性の高い商品(たとえば宝石など)の場合は、たった一つの消費で大きな効用を得ることができます。ならば、単に効用を求めるだけでなく、そこに希少性も含めた視点を持つことが、商品開発や販売では求められるのではないでしょうか。