失敗しても成功しても学びのない結果に

ありがちなのが、目標を達成するためのKPI(重要業績評価指標)がしっかり設定されず、たとえば商品のリニューアル自体が「目的」になっていたりすることです。

「どうしても何かリニューアルをしなくちゃいけないんで、ちょっとだけお茶を濃くしてみました。“濃くなって新登場“でいきましょう」

というように、ニュースをつくりたいがためのリニューアルをしてしまう。

KPIが設定されていないので、失敗しても誰も責任をとらないまま「なんかスベッたね」で終わり。成功してもそれはたまたまなので、再現できない。「なんとなく時代の雰囲気に合ってたのかな」で終わり。つまりスベッてもうまくいっても、自分たちでは理由がわからない。

目標とKPIの設定が大事なのは、商品のカテゴリーにもよりますが、イノベーションレベルとも関わってくるからです。経営陣に確認すると、「いや、そこまで根本的に見直したいわけじゃないんだよ」というスタンスの場合もあれば、「根本的に変えなくてはダメだ」ということもある。

また時間軸も確認しておく必要があります。「この秋にはお店に並べなくてはいけない」というケースもあれば、「いや、ここは長期的にじっくり研究開発しよう」というケースもあります。

経営層を巻き込んでKPIの設定を

目標とKPIの設定においては、できるだけ役員以上の意思決定者を巻き込むことが大事なのですが、私が役員と面談するときは、そこに現場の担当者や部長の方にも同席してもらっています。そこで常務が、「いや、僕は実はこういうブランドにしたいんだよ」という話をするのを聞いて、「そうだったんだ! 常務のこんな話、初めて聞いた」という社員が思いのほか多いのです。

つまり役員の考えていることが、下まで浸透していない。役員がメッセージを発していないのです。また、下は下で誰も尋ねない。「これだけしょっちゅう会議をしているなら、もっと思いの丈を話せばいいのに」と思います。

逆に、そういう思いがある上の方からすれば、下の人が何かアイデアを出してきても、「なんか違うんだよな、そういうことじゃないんだよな」と却下することになる。もったいない話です。

売り上げ目標を共有するだけでなく、どうやって達成するかというHowの部分についても、経営層を巻き込んで話しあうことが大事なのです。

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桶谷 功(おけたに・いさお)
インサイト 代表取締役

大日本印刷、外資系広告会社J.ウォルター・トンプソン・ジャパン戦略プランニング局 執行役員を経て、2010年にインサイト社設立。初著『インサイト』(ダイヤモンド社)で、日本に初めてインサイトを体系的に紹介。他に『インサイト実践トレーニング』『戦略インサイト』(ともにダイヤモンド社)など。商品開発・ブランド育成などのコンサルティングを行っており、消費財・サービス・テック系企業などで実績多数。インサイト オフィシャルページ