日本でピント外れな商品が発売される理由

日本企業がインサイトを商品開発に生かせない理由はたくさんあると思いますが、ここでは次の2つを取り上げます。

1つめは組織のなかで喧々囂々けんけんごうごうの議論をする習慣がないこと。

2つめは、「売り上げ1.3倍」「売り上げ○○億円達成」というように、上から目標数字は降ってくるけれど、それをどうやって達成するかという戦略について、はっきり話し合わないことです。

まず、「喧々囂々の議論をしない」というのは、国民性もあるので仕方がないかもしれません。なにしろ日本人は意見の衝突を嫌います。たとえばおじさん技術者が若い女性向けの商品を開発しようとして、若い女子社員に「こういうの、女の子は好きでしょう」と意見を求めたとしましょう。意見を求められた女性社員は、「イマイチだな」と思っても、それを言うと角が立つので「そうですね~」と肯定してしまう。

またマーケティングでは「グループインタビュー」といって、ターゲットとなる消費者を集めて商品の感想を座談会形式で語ってもらったりしますが、これもさきほどと同じ理由で、「ああ、いいですねー」「ほしいかもー」というような、何となく肯定的な意見しか出てきません(このグループインタビューの問題については、次回、詳しく取り上げたいと思います)。かくしてピントはずれの商品が発売されてしまうというわけです。

また、日本企業では他部署の仕事内容に口を出すことをよしとしません。だからマーケティング部門が開発部門になにか提言すると、「領海侵犯」ととられてしまう。「フィードバックは何より貴重なもの」として、他からの意見や評価を積極的に生かす欧米企業とはそこが違うのです。

戦略は「人」「シーン」「目的」で考える

日本企業では、「今年は売り上げを去年の1.3倍にしなさい」といように、上から達成すべき目標だけが降ってくることが多いのではないでしょうか。しかし東南アジアなどの新興国ならまだしも、この人口減の日本で、100億円の売り上げを130億円にしようと思ったら、何らかの戦略が不可欠です。具体的には、「人」「シーン」「目的」のどれかを変えなくてはなりません。

たとえば食品であれば、
・いままで全然食べていなかった人が食べるようにする(「人」を変える)
・いままではおやつにしか食べていなかったけれど、夜も食べるようにする(「シーン」を変える)
・小腹を満たすためでなく、美容のために食べるようにする(「目的」を変える)
などです。そのようにしなければ目標を達成することは困難です。

そしてその目標達成の方法を決めるには、「このあたりにチャンスがあるんじゃないか」(例えば、いままで全然食べていなかったシニアに食べてもらえるチャンスがあるのでは)という仮説について議論されないと、そこにどれくらい可能性があるかを調べることもできません。

また、設定した目標を達成するための「課題の確認」をすることが不可欠です。ここで忘れてはならないのは、きちんと事実ベースで定量的な数字を見ながら、「人」と「シーン」と「目的」について話し合うことです。