部下がサポート意識を持てば上司も軟化する

ここまでフル出社を望む昭和上司をやり玉に挙げてきましたが、じつは昭和上司だけを悪者にするのも間違いです。

弊社は、全国の従業員数5名以上の企業で、直近1カ月以内に週1日以上テレワークをした一般社員と、テレワークをした部下のいる管理職を対象に、アンケート調査を行いました。一般社員はテレワークをポジティブにとらえる傾向がありましたが、管理職側は「部下の生産性が下がっているのではないか」と回答した人が48.0%にのぼったように、テレワークに不安を抱いている人が少なくありませんでした。

これはある意味、当然と言えます。一般社員、とくに自己完結型のPCワークをしている人にとって、テレワークはいいことばかりでしょう。電話を取らなくてもいいし、話しかけられることもなく集中して仕事に打ち込めます。しかし、上司の仕事は一人で完結しません。マネジメントはジョブ型ではなくメンバーシップ型の仕事であり、遠隔になるほど困難さが増して、多くの労力やエネルギーを必要とします。上司側がテレワークに不安を感じるのは無理もないことです。

一般社員は、そうした上司の心理をよく理解する必要があります。一般社員の仕事も、本当は自己完結型のものだけではありません。組織で働く以上、上司や同僚、後輩へのサポート業務も職務のうちで、たとえば仕事の進捗状況を伝えるのもその一つです。しかし、自分の仕事は自己完結型だと考えている一般社員は、サポート業務をムダだととらえて怠ってしまう。その結果、昭和上司は「やはり出社してもらわないとダメだ、不便だ」という思いを強くするのです。

週5出社を避けたいなら、一般社員も上司が安心できるようにテレワーク中もサポート業務に気を配ってみてはいかがでしょうか。チャットツールでこまめにホウレンソウするなどの工夫をしていれば、上司の不安は和らぐはずです。面倒に感じるかもしませんが、それが完全フル出社に時計の針を戻さないことにつながります。

構成=村上 敬

高橋 恭介(たかはし・きょうすけ)
株式会社あしたのチーム 代表取締役社長

千葉県松戸市生まれ。千葉県立船橋高校出身、東洋大学経営学部卒業後、興銀リース株式会社に入社。リース営業と財務を経験する。2002年、創業間もないベンチャー企業であったプリモ・ジャパン株式会社に入社。副社長として人事業務に携わり、当時数十名だった同社を500人規模にまで成長させ、ブライダルジュエリー業界シェア1位に飛躍させた。同社での経験を生かし、2008年リーマンショックの直後に株式会社あしたのチームを設立、代表取締役に就任する。国内外3000社を超える中小・ベンチャー企業に対して人事評価制度の構築・クラウド型運用支援サービスを提供している。現在も全国で年間100回以上の講演に登壇し、数多くの著書も出版している。