東京オリンピック中止より、日本人が心配し行動すべきこと

オリンピックが経済的に国民のためになったことはない。オリンピックを誘致し開催することで、政治家は票を得ることができる。また、スポンサー企業や建設業など関連ビジネスは多くの収益を上げるかもしれない。しかし、過去にオリンピックで救われた国など、まったく存在しない。これは疑いようのない事実だ。

なぜなら、オリンピックというものは、債務を増やすものであって、いずれどこかで国民がツケを払うことになるからだ。政治家は、「オリンピックは日本にとって素晴らしい機会だ」と言い続けるだろうが、日本を救う機会になることはない。日本のみなさんは、オリンピックが開催されるかどうかが心配だろうが、それよりも、その後の債務のことをもっと心配すべきだと言いたい。

日本に身を置いている人は、できるだけ早いうちに海外に身を置くことを経験すべきだと思う。シンガポールでもたくさんの日本人が働いているし、中国でも多くの日本人が働いている。大切なことは、日本の外の世界から日本という国を見て、客観的に自分たちの姿を知ることだ。

撮影=原 隆夫(takao hara)

ジム・ロジャーズ(Jim Rogers)
投資家

ロジャーズホールディングス会長。1942年、米国生まれ。イェール大学で歴史学、オックスフォード大学で哲学を修めた後、ウォール街で働く。73年にクォンタム・ファンドを設立し、ヘッジファンドという手法にて莫大な資金を運用して財を成した。ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと並び世界三大投資家と称される。『大転換の時代』(プレジデント社)、『世界大異変』(東洋経済新報社)など著書多数。