時代の先駆けとなった、名門・エルメスの軌跡
約180年もの間、トップメゾンとして君臨し続けるエルメスは、色褪せることを知らない。早くから多様性をけん引し、女性の活躍に着目してきたその姿勢は、現代社会のスタンダードにさえなっているのだ。
エルメスが馬具工房としてスタートしたのは1837年。創業者のティエリ・エルメスが36歳のときだった。デザイン性と品質の高さはもちろん、今と変わらず機能美を追求した製品は、時のロシア皇帝やナポレオン3世をも虜にし、67年のパリ万国博覧会では初出品でありながら銀賞、89年にはグランプリも受賞している。
80年、2代目シャルル・エルメスにより、現在のパリのブティックがあるフォーブル・サントノーレに移転。馬具の卸だけでなく、顧客への直接販売をスタートさせた。
それから約10年後、馬の鞍を入れるバッグとして「オータクロア」が誕生。一方で1900年代に入ると、それまで全盛だった馬車に代わり自動車産業が活発に。それをいち早く見抜いていた3代目のエミール・エルメスは、社会進出する女性たちに向け、バッグのほか、グローブや財布などのスモールレザーグッズの販売に着手。この采配が今日のメゾンの原型をつくったともいわれ、彼が“ミスター・エルメス”と呼ばれる所以ともなった。