違いは引け目ではなく強み。多様性は女性に味方する
課長時代から続けている「いいことノート」は陶山さん流マネジメントの基本だ。社長に就任後も1年をかけ、1人15分で全社員と面談し、印象に残ったそれぞれの「よい面」を記録した。
「部下の人柄を知れば評価もフェアになりますし、現場のリスク確認もできます。管理職が部下の人間性に注目することは、組織の多様性を把握するという意味で大事ではないでしょうか。それは柔軟で強い組織の育成につながると思います」
しかしそんな陶山さんもかつては女性であることに引け目を感じ、自分が組織の多様性に寄与するとは思えなかった。認められたくて男性に同化し、パンツスーツに身を固めて懸命に働くひとりの女性だったのだ。
「これから役員をめざす女性に伝えたいのは、違いを生かすこと。多様性に富む組織運営が、持続的な成長につながることはさまざまな企業で検証されています。違いは引け目ではなく強み。若い人にはもっと自分を出して働いてほしいと思います」
同時に本格的な女性活躍にはCSRや広報だけではなく、営業など経営に影響力がある主要部門の部長や役員への登用を進めることが、組織変革に必須だと指摘する。女性にも課長以前から経験の機会を与え、男性と同様に幹部候補として育成するということだ。
「チャンスが来たら躊躇せずに手を挙げてほしい。組織の階段を上がると、見えてくるものがまったく違ってきます。うまくいったら実力、失敗したら人事のミス、くらいの気持ちでいいんですよ(笑)。まずはバッターボックスに立たないと勝負は始まりません」
陶山さんは数年後に会社人生のゴールを控え、心に決めたことがある。
「記憶と記録に残しても影響力は残さず去りたいですね。次のステージでもイキイキと楽しく働く姿を、後輩たちに見てほしいのです」
お酒の銘柄&価格
接待では供する酒類の質でもてなしのレベルが決まる。ワインの価格で商談の本気度がわかるということだ。逆も同様。ワインや日本酒の価値を知り、逸品には感謝を示すのが礼儀。もてなしが通じる相手とは心も通じる。陶山さんも宴の主人が務まるように自費で高級店に通い、ワインや料理の知識、場慣れのための練習をしたそう。
歴史小説
接待で会話がはずめば心象がよくなるもの。耳学問でもいいので話のネタを揃えておきたい。スポーツや食が常套だが、歴史も◎。経営者は「三国志」ファンが多く、経営学では事例を引くこともあり、背景や思考パターンなど、大筋を知っておくとよい。文庫本でいいが、時間がなければ漫画もあるので、一応頭に入れておくと役立つ。
構成=モトカワマリコ 撮影=大槻純一
1979年、安田火災海上保険に一般職として入社、95年、総合職に転換し、医療保険分野で課長・部長を歴任、2013年から執行役員、17年にはSOMPO企業保険金サポート代表取締役社長就任、19年より現職。