部下へのヒアリングで知った怒ってばかりいる自分
「会社に期待されていないと感じて転職を考えたこともあったんです。でも、好きな仕事だし、今の場所で一生懸命働こうと気持ちを切り替えたときに管理職を打診され、とても驚きました。その後、管理職登用試験に合格し、私は私のままでよかったのだとホッとしました」
課長になり、仕事量は変わらないが、責任はグンと増えていった。
「そのときの上司が工程管理に厳しい人。『来週の予定を10分単位で書くように』と、徹底的に工程管理を鍛えられました。でも、先のことを考える余裕のなかった自分にとっては学ぶべき必要なことだったのです。管理職としてチームを回していくためには、未来をイメージする力が大切だと気づいたのは、しばらく経ってからのことでした」
4年後、部長に抜擢されると、工程管理能力が大いに役立った。
「“女性業務部長誕生”と、私も肩肘張って頑張りすぎていました。あるとき、怒ってばかりいる自分にハッと気がついたんです。私は上司として、常に部下に見られ評価される立場。でも、部下を認めることもせず、怒ってばかりいる上司なんてイヤですよね。結局、チームがうまく回らなくなりました」
部下に意見を求めると、感情的な物言いや威圧的な態度ゆえに、部下の信頼を失っていることを知った。それを機に、褒める・怒る・認める基準がいつも変わらぬよう、安定した判断基準を持つよう自分を律していくことを決めたのだという。
「そのために何が必要かを考えると、体調管理なんです。疲れたり、体調がすぐれないと機嫌も悪くなるし、笑顔も消えてしまいます。気持ちを安定させるためにも体調管理はとても大切。私がフラットな状態でいれば、部下も気持ちよく意見が言えるようになりますからね。それがマネジメントのコツともいえるのでは」
3つの部門で10年間、部長職を経験。若い部下が多いなら“お母さんキャラ”、年上が多いなら“絶対にキレないキャラ”など、チームメンバーに合わせて自身を変えることも覚えたそう。
「言葉を発する前に一拍置く、その間に言うか言わないかを考える。これを繰り返していると習慣化され、感情をコントロールできるようになりました。でも、感情はコントロールできても、心の奥底にある思いは黙っていても部下に伝わります。仕事への不安などは隠さず部下に伝えることで、部下も私に意見しやすくなるように思います」
構成=江藤誌惠 撮影=大槻純一
1987年、業務職として入社。91年、財務部長秘書に抜擢。99年、担当職に転換。2008年CSR推進部社会貢献推進室長に。16年九州支社業務部人事業務室長を経て、現職。
1990年入社後、営業部に配属。2005年、管理職登用試験を受け、神戸支社・担当課長に。09年に近畿圏広域支社・業務部長に抜擢。神戸支社・業務部長、北陸地区本部・営業企画部長を経て現職。