役職の有無にかかわらず、自分にできることをやる

業務職(一般職)で入社後、13年目で担当職(総合職)に転換した岡野喜子さんが、初めて管理職を任されたのは担当職になって10年目のこと。

三井物産 中部支社 副支社長 岡野喜子さん
三井物産 中部支社 副支社長 岡野喜子さん

「室長(課長相当職)に抜擢されたときは、10人ほどのチームメンバー全員が年上にもかかわらず、『私は室長だから』とおごった態度で接し、意見が対立してトラブルになったことも。そのとき、年上の部下に『おじさんたちの知見を吸収しなさい、教えてあげるから』と言われたんです。そこから室長としてどうあるべきかを考えるようになりました。基本的に、チームメンバーは仕事が好きな人ばかり。うまく回せば必ず結果を出せるチームなんです。その後、お互いが自由に意見を言い合えるようにし、肩書に関係なく、自ら意見を聞きにいくなど、年上の部下たちへ敬意を払うようにしました」

室長として10年の経験を積んだ後、2018年、中部支社の副支社長(部長相当職)に。三井物産の副支社長ともなれば、全国紙の人事欄に異動情報が掲載される。掲載後、社内外からの反響の大きさに、担った職務の重大さに改めて気づいたそう。

「副支社長になってがんばろうと思うのですが、ライン長ではないので直属の部下はおらず、どう動けばいいのかわからない。初めて赴任した名古屋に知り合いはいなく、地域のこともよくわからず悩んでいました」

副支社長に就任後、不安な気持ちを抱えつつ、半年ほどもんもんとした日々を送っていたという。

「副支社長は、各界の会長クラスが集まる会議や懇親会に出席する機会が多いのですが、皆さんの顔が覚えられなくて……。前に名刺交換をした相手かどうかがわからず、挨拶できないでいました。そんなとき、別の会社の女性役員に『チャンスを逸するくらいなら名刺はどんどん渡したほうがいいわ。私なんか何度も同じ人と名刺交換したわよ』と言われたんです。不安な気持ちも何もかも、その言葉で吹っ切れました」

思い切りやるしかないと覚悟を決め、まずは地域になじむためにさまざまなイベントに参加した。

「人と話しているといろんなヒントがもらえます。人と人との関わりが仕事につながっていくんですね。先日はラグビーワールドカップのスタッフボランティアに参加。スポンサーになっている取引先も多く、仕事を離れた場所で取引先の方々と会話するきっかけにもなりました。弊社はモノをつくっていない会社ですから、人がすべて。今、その本質にたどり着いた気がします」

部長のモットー