マイクロソフト、アマゾンなどが率先して出社を止めた
ワシントン州が比較的早く感染のピークを超えられた理由の一つとして、感染拡大の初期にテレワークが一気に浸透したことが挙げられるだろう。
ワシントン州内で多くの大手IT企業の拠点を抱えるキング郡が、外出自粛やテレワーク推進などを呼びかけ始めたのは、初の死者が出てから5日後の3月4日。この時点ではまだ、学校も休校になっていなかったが、IT企業各社の動きは速かった。
州内に5万人以上の社員を抱えるマイクロソフトは、この日のうちにキング郡内の全社員にテレワークへの移行を指示。シアトルで4万5000人が働くアマゾン、シアトル周辺で5000人が働くフェイスブックのほか、グーグルや任天堂アメリカなどでも、ほとんどの社員がテレワークに移行した。
特にシアトルの周辺には、IT企業が集まっている。シアトルに本社を置くアマゾン、郊外のレドモンドに広大な本社を持つマイクロソフトのほかにも、ハイテク企業は多い。こうした土地柄もあり、もともとシアトルでは勤務時間の5割以上を在宅勤務するテレワーカーが7.6%を占めていた。ワシントン州全体で見ると、全米平均の約2倍の5.9%がテレワーカーというデータもある。
正社員か、派遣社員やアルバイトかにかかわらず、スタッフにオフィスワークとテレワークのマルチ環境を与えているIT企業では、普段は普通に出社している人でも、雪が降って道路の状態がひどかったり、子どもの学校が休みだったりすると、それを理由に「今日は家で仕事します」と気軽に言える。だからこそ、コロナの感染が拡大し始めた時、多くがスムーズにテレワークに移行できたのだろう。
シアトルの主要産業と言えるIT企業の多くが、早い段階でテレワークに踏み切ったことで人の移動が一気に減り、街から人が消えた結果、「ソーシャルディスタンシングが当たり前」という空気をもたらした。