ハプスブルク帝国の隅々からグルメを集めて生まれたオーストリア料理は、そのバリエーションの多さと味の豊かさで有名。口の肥えたオーストリア人が、春になると競うように食べる白アスパラガスにも、新型コロナウイルスの影響が出ています。2004年からオーストリア・ウィーンに住む御影実さんがレポートします。
茹でた白アスパラのオランデーズソース添え(手前)と、白アスパラのフライの両方が味わえる、アスパラ専門店の定番料理
茹でた白アスパラのオランデーズソース添え(手前)と、白アスパラのフライの両方が味わえる、アスパラ専門店の定番料理

白アスパラを食べないと、春が来た気がしない

白アスパラガスは、日本でもおなじみの、日の光の下で育つ緑アスパラと異なり、土の中で成長し、光を浴びないまま収穫されます。白アスパラの収穫は、土の畝に埋まっているアスパラを勘と経験で探して収穫しなければならないため、緑のアスパラに比べてスキルが必要な重労働。しかし、その繊細でジューシーな味わいは、春の風物詩として大人気の味覚です。

茹でてオランデーズソースをかけていただく調理法が最もメジャーですが、スープやリゾットにしたり、パン粉を付けてカラっと揚げたり、ホイル蒸しにしたりとさまざま。オーストリア人にとっては「白アスパラを食べなければ、春が来た気がしない」というほどの、季節の味覚です。

しかし、そんな春の代名詞として愛される白アスパラが、今年は危機を迎えています。